11月4日(日) 2012 J2リーグ戦 第41節
甲府 2 - 0 熊本 (13:04/中銀スタ/13,050人)
得点者:56' オウンゴ-ル(甲府)、74' 井澤惇(甲府)


前回対戦は5月。その時点での甲府はまだ城福サッカーが試行錯誤の状態だったのか。あるいはダヴィも山本も欠く布陣だったからか。スコアレスドローに終わったその試合のエントリーでは「勝てた試合だった」、そう悔しがって書いています。しかし、最終節を前にして再びの対戦となった甲府は、すでにリーグ優勝を決め、しかも22試合負けなしというJ2記録を更新中。そして、前線には32という突出したゴール数を積み上げたダヴィが。

甲府20121104

「今日は思いっきりやるだけだった。守備のポイントとして、ダヴィはある程度抑えることができたと思う」と、試合後高木監督は振り返りました。「ある程度抑えることができた」というように、センターバックとボランチでダヴィを抑えにかかった熊本。ある程度、支配され、攻め込まれることを見越していたようで、スカパー解説者も試合途中、攻めている甲府よりも、決定機を与えない熊本に、実は主導権があるのではないか、と言うような展開。

しかし、その攻守のカナメとして踏ん張っていた原田が、前半のうちに、ダヴィのアフター気味のバックチャージによるダメージから交代してしまった。代わって吉井が入る。しかし、見ている側からは、この予期しないアクシデントが、今日のゲームの流れを決定づけてしまったように思われました。

そして福王。2枚のカードであえなく退場。これもダヴィ。スピードで振り切られまいと手がでてしまうのか、うまく、体を入れてファールせざるを得ない状況を作り出しているのか。

後半に入った11分。持ちこたえていた守備がとうとう決壊します。フェルナンジーニョが右サイドで持つと、ダヴィが入るまでの”時間”を作る。低いクロスが送られると、ダヴィを背にした矢野が痛恨のクリアミス。オウンゴールで先制点を献上してしまいました。

29分にはフェルナンジーニョが縦に入れる。井沢がそれをダヴィに当て、ワンツーで熊本DFラインを切り裂きました。至近距離から打たれたシュートはさすがの南も防ぎようがなかった。

いずれにせよ、「ダヴィはある程度抑えることができた」が、結局、別の意味でダヴィにやられてしまったとも言えましょう。あれだけひとりのプレーヤーにエネルギーを割いてしまうと、全体のバランスを欠いてしまうのも致し方ないのか。「J2レベルではない」(熊日)と福王は悔しがりますが、しかし、このクラスを普通に止めきれないと、やはり勝てないし、J1に昇格することは難しいということでしょう。

ただ甲府はダヴィが中心ではあるにせよ、彼だけのチームではありませんでした。城福監督は、その著書で、自らの戦術を「裏」「時間」「幅」の3つだと書いています。「裏」はもちろん敵DFの裏を狙う選手。「時間」はボールを溜めて時間を作り、味方の上がりを待てる選手。「幅」はもちろんピッチを大きく使ったサイドチェンジやサイド攻撃のことを指す。永里や柏が裏を突く。フェルナンジーニョは時間を作る。福田や佐々木が幅を使う。そのうえで、傑出した存在のダヴィが躍動する。

熊本もリーグ戦終盤に至ってチームが成熟した。しかし城福監督は、それ以上に甲府というチームを”作り上げた”。5月以来の対戦でまさしく実感した変化でした。

「攻撃ではミスでできないことがあった」と高木監督が言う。敵陣に入ってからのそれは、後半から顕著になりましたが、前半は自陣からのロングパスが多用され、どうもチームの”重心”が後ろにあるような感じがこの試合を通してしていました。それはピッチの外でこの試合を観ていた主将・藤本のブログの分析にもあるように。養父の言葉を借りればそれは「相手をリスペクトしすぎた」ということなのかも知れません。

優勝チームであり、22試合不敗という記録を更新しているチーム。1万3千人以上のファンをスタジアムに集め、試合終了後には優勝セレモニーで”シャーレ”を掲げた。海野会長は挨拶で、あの苦境時代、初めて観客3000人を越したときの喜びを感慨深げに思い出していた。勝つということ、優勝するということの意味。チームのメンタリティを、その肌で実感できた。選手も、ファンも。熊本に足りないものも、課題もともに感じることができた。

しかし負け惜しみでもなんでもなく。これまで、圧倒的な強さで昇格していったチーム、広島、柏、FC東京。仰ぎ見るような存在。そんな距離感もだいぶ縮まってきたような印象もあります。プロビンチャのお手本という意味でも、少しでも近づきたい。そしていつかは、圧倒的でなくてもいいから、僅差でもいいから膝を着かせたい。

「チームは6位以内の可能性はないが、いいチームを作ろうとみんな気持ちが入っている。ホーム最終戦と天皇杯は頑張りたい。もっといいチーム、クラブにしていきたい」。養父の言葉からは、希望を持って前を向いている力強さがすでに感じられます。ただ、これまで培った(本来の熊本の)力を、この試合で出し切れなかったことは、相当無念だったに違いない。

試合終了後、ダヴィを始めとした甲府の選手たちが、養父に対して当然厚く(見ようによっては手荒く)挨拶を交わす姿をテレビ画面越しに見ながら、ああ甲府の選手たちは”養父の“熊本と戦ったんだという思いがしました。養父が10番を背負い、タクトを振る熊本。だからこそこの終盤に来て好調なのだろうという思い。そんな古巣の盟友たちの”期待”に応えられなかったことが、養父は相当悔しかったのではないでしょうか。フェルナンジーニョに再三振り切られ、スライディングから起き上がったときの養父のため息に似た苦笑い。それは、そんな彼の気持ちを垣間見たようで仕様がありません。

次節、今季最終節。ホームでの見納め。最後の戦い。片山は帰ってくるものの、原田は状態次第。福王は出場停止。満身創痍のチーム事情。すでに力を出しきり、最後の力を振り絞るわがホームチーム。そして熊本の明日につながる戦いともいえる。

いろんな思いを胸に。リーグ最終戦。一緒に戦いましょう。

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