J2のリーグ戦が終了して、チームも1週間という長めのオフをとったようで、われわれもちょっとホッとしてしまって、いつの間にかJ1も最終節を終え、降格チームが決定してしまいました。長いことエントリーが空いてしまいましたが、それでも天皇杯まではまだ半月近くあるし、ここで今季のリーグ戦に関して、一度、ちゃんと振り返りをしておきたいなと思いました。

とは言っても、例年ならエントリーにいただいた拍手数を基にしてベストゲームを決めていたのですが、昨今、拍手数も低迷しており(笑)、ほとんど差がなくなっていますので、今年は拍手+われわれの独断で、ベストゲーム、ドラマチックゲーム、ターニングポイントゲーム、そしてワーストゲームを決めていきたいと思います。


まず、ベストゲームとしたのは10月7日第37節のアウェー山形戦です。まだ昇格に望みをつないでいた山形を相手に、敵地で0-2の勝利を納めた試合。これを今季のベストゲームと“断言”したいと思いました。エントリーでも、この試合を「完勝でした」と記しています。

初ゴールを上げてから”存在感”を示していたFW北嶋を欠く試合でした。しかし、北嶋の活躍に発奮したのかFWに復帰した武富の2ゴールで、山形を沈めました。そこまで5試合勝利のなかった山形は、このホーム戦で「まるで勝利という獲物に飢えた野獣のように襲いかかってきました」が「その勢いに怯まず」、熊本が耐えるべき時間を耐えて得点を重ねる。

「10分、自陣右サイド奥から五領が浮き球のパス。齋藤が付いていた相手を振り払って前を向く。アーリークロスの先は武富。DFの死角に入った武富が、ヘッドで叩き込みます。」
「23分、自陣から持ち上がると、ダイアゴナルに走り込んだ五領にパスが通る。五領がPA左奥からマイナスで返す先には養父。養父のシュートはブロックされるも、そのボールを原田が左に繋ぐ。藏川から武富。武富が切り返してひとりかわすと、右45度の角度から冷静にコースを見切って打つ。シュートブロックも、GKの手も抜けて、ボールはゴールネットに突き刺さる。」

守っても、リーグでもダントツ1位のシュート数を誇る山形のシュート数を前半2本、後半は1本に凌ぎ“打たせない”という究極の戦術的ゲーム。「ボールを保持はするものの、最後のフィニッシュまで行けてなかった 」「そうさせないような守備を組織的に、しっかりブロックを作ってプレスをかけてきた」と敵将・奥野監督に言わしめたチーム記録の4連勝目。そして、そのままの勢いで熊本は仙台に乗り込み、天皇杯3回戦のJ1仙台戦に向かうことになります。

故障者や遠征でのトラブルといったチームをめぐるいろいろなアクシデント、ネガティブな要因を越える”勢い”。それを感じさせた試合といえました。


ドラマチックゲームとして挙げたいのは、やはり北嶋が初ゴールを挙げた9月23日第35節のホーム福岡戦でしょう。

先制点を挙げた高橋祐太郎が前半のうちに故障。その直前にはミスから福岡に同点にされていました。そこに投入されたのが北嶋。

「スタンドのファンだけでなく、ピッチ上の選手たちにもまん延しそうなそんな嫌なムードを払しょくしてくれたのはこの男でした。ある意味、待ち望んでいたように割れんばかりの拍手が、ピッチに登場した彼を包みました。」

なによりこの日、ファンの心を熱くしたのは彼のブログに綴られた「決意。」という文章でした。熊本の昇格を託されて移籍してきた北嶋。しかし得点という”結果”がでないなかでの苦悩。その彼が宣言した。「今日の試合絶対勝つ。ゴールを決める。絶対決める。」と。

そして前半のアディショナルタイム。北嶋が指差した先に、原田がアーリークロスを入れる。「滞空時間の長いジャンプから高い打点のヘディングで勝越し点を決めます。美しい。そして実に北嶋らしい。移籍後初得点でした。」

さらには後半18分。福岡DFの古賀との駆け引きに勝って押し込んだ技ありの駄目押し点。まさに”北嶋の試合”と言えるゲームになりました。

「約束したそのゴールを”有言実行”した後に吠えるその鬼気迫るような目つき、そこに抱きつきにいった藤本のまた同様な眼差しを見て、心揺さぶられない赤いファンはいなかっただろう。涙ぐんでいるサポーターさえいました」。そう書いていますが、今でもあのシーンを思い出すと、胸が熱くなります。


さて、この試合の前節・大分戦の勝利も含め、熊本はここからクラブ新記録となる5連勝(天皇杯仙台戦を入れれば公式戦6連勝)に突き進むのですが、リーグ終盤におけるこの好調を形作ったターニングポイントは、実はもっと早い段階にあったんじゃないかとわれわれは思っています。それは表題に「勝ったぞー!千葉に」と、ガラにもなく手放しで喜びを表現した7月1日第22節のホーム千葉戦。リーグ後半戦最初のゲームでした。

前回対戦の大敗から、千葉をリスペクトした熊本は、開幕以来の4バックというシステム変更でこの試合に臨みました。息が詰まるような神経戦。堪らず交代カードを先に切る敵将・木山監督。守り一辺倒ではなく、まさしく組織的守備から攻撃に転じる熊本の運動量。終了間際の決勝点。

戦術もベンチワークも、選手のパフォーマンスも千葉を上回り、木山監督から完敗に近いコメントを引き出した試合。その後、4連敗などのつまずきはあるものの、この試合から用いたシステムと戦術、大クラブへの勝利という自信が、それまで”内容は良くても結果が伴わない”といったジレンマからチームを脱却させる節目(ターニングポイント)になったゲームだったのではないかと思うのです。


さて、最後に今シーズンのワーストゲームを挙げるとすれば、第8節4月15日のホーム水前寺、松本山雅戦。多分、多くのファンにとって異論のないところではないでしょうか。「試合途中に退席する人に対して『野球観戦じゃないんだから・・・』と揶揄した覚えがあります。しかし、今日ばかりは、3失点目を見届けた後、席を立つ人たちを責める気持ちにはなれませんでした。」と書いています。それほど酷い試合でした。ただ、指揮官やメディアが選手たちの”メンタル面”を一方的に指摘するなか、われわれはそれ以上に、戦術やベンチワークと選手たちのパフォーマンスの食い違い。ちぐはぐさに注目しました。そしてそれは、”簡単に勝てる相手などこのリーグにはいない”ということを教えてくれる象徴的な試合でした。この頃の迷走が、今季の熊本の最も”もったいない”部分でした。しかし長いリーグ戦、この時期があったからこそ、苦悩して積み上げたものが大きかったとも言えるのかも知れない。まだまだ。足を掬われる余地はいつでもあるという意味も含めて、この試合は深く脳裏に焼き付けておくべきでしょう。


J2リーグ戦閉幕からこの間、プレーオフでは6位の大分が5位の千葉を下し、J1昇格を決めました。あの大分がJ1に復帰、そしてJ1からは札幌、神戸とともに、あのガンバ大阪が落ちてくる…。われわれの2012年はまだ終わっていませんが、来季のリーグ戦に思いを馳せれば、また身が引き締まる厳しい戦いが予想される。しかし、だからこその楽しみでもあります。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/389-39b59035