3月24日(日) 2013 J2リーグ戦 第5節
東京V 1 - 1 熊本 (16:03/味スタ/3,291人)
得点者:66' 飯尾一慶(東京V)、88' 高橋祐太郎(熊本)


試合2時間前。発表されたスタメンとベンチメンバーを見てなんとなくイメージしたのは、先行逃げ切りがこの日の吉田監督のゲームプランなのではないかということでした。静かな外見とは違って常に”攻撃的”だということも段々分かってきたので。

しかし、実況や試合後の各メディアも指摘するように、実際のゲームでは極端に”堅い”前半。互いに探り合っているのかシュートに持ち込む回数も少なく、両監督とも落ち着いてベンチに座り込む。“我慢くらべ”なのか。

20130324東京V

上がってこない熊本のサイドバックの姿勢を見て、スカパー解説の羽中田氏は、熊本は前半0-0で良しとしたプランだと分析していましたが、試合後の選手のコメントや監督の「連戦の影響もあったのかもしれないですが、少し体が動かなくて」という言葉を読めば、それは結果的にそうなっただけだというのが分かります。

「上がってこないサイドバック」の理由は、この試合ヴェルディが、初めて3-4-3というシフトを組んで、攻撃的なSHで押し込んできたせいもあるし、何より開幕以来まだ手にしていない勝ち点3を、このホームゲームでどうしても欲しいという相手のアグレッシブさに押された部分も少なからずあったのではと推測します。

結果として、我慢のゲーム運びが要求され、そして自ら修正。それはそれで、見事な対応力だったと思います。よくよく我慢して勝機をうかがったと。 前半のその集中したプレーぶりは、見ごたえすら感じました。うまくいかないプレーにも焦らず、バランスをとり、カバーを怠らず。ピーンと張りつめた雰囲気。

そして試合が動き出したのは後半。

まず腰を上げたのはヴェルディの三浦監督。高原に代えて中後を投入。高原は前半、嫌な動きをしてくれていたので、ちょっと助かった感じもしましたが…。敵将は、「前半少し、狙いとしているサッカーというよりも、勝ち焦るような、五分と五分のボールや高原に向けてルーズなボールを蹴って、つぶれたところで前を向いて攻めるというイメージしかなかったので」(J’s Goal)と、その交代の訳を明かしている。

ただ、それよりやっかいになったのは、西が一列前に配置されたことで明らかにヴェルディに「リズムとテンポ」が生まれたことでした。

藏川のサイド。度々、突破される展開。クロスを上げられるというだけでなく、中央に切り込まれ、ゴール手前までドリブルを許してしまう。思えば、このゲームだけではなく、ここが今の熊本のウィークポイント。片山サイドも同じと言えば同じ。そこに西が一列前に出て、サイドに絡むようになってからはさらに。

「(失点場面は)守備的MFとしての癖が抜けず、前へ出て行ったしまった」(熊日朝刊)と吉井。
「(失点は)自分のミスだし、チームとしても気の緩みがあった」(熊日朝刊)とは蔵川の弁。両者がそのミスを悔やんでいる。

失点自体は典型的ですが、この場面にはゲームの、チームの色んな伏線が一気に表面化しているように思います。全員で守るチームなのに、この日のサイドは、頻繁に一対一の形に持ち込まれてしまっていた。それは、ボランチと吉井、蔵川の連携、カバーリングの問題だけなのか。もちろん、個々の選手の問題(スピードがないとか)としてしまうと、また全然違う性質の課題になってしまうので…。

その時間帯のチームの重心、バランスのありか。やはり前がかり過ぎていたように思えます。なぜそうなってしまったのか。修正なり“リバランス”をするきっかけはなかったか。そういった“バランサー”の役割は誰なのか。

しかし、失点してからの交代カードは素早く、しかも結果を出しました。見事でした。

黒木から縦に入ったパスを仲間が右に戻す。藏川のアーリークロスはゴール前に飛び込んだ高橋の頭にどんぴしゃ。ネットに突き刺し同点とします。その2分前に全く同じ形のヘディングを外していただけに、「よけいに大事に大事に決めました」と言う高橋でした。

俄然流れは熊本に傾く。残りわずかとなった時間。勝ち切りたい熊本は人数を掛けてペナルティエリアに迫る。迫力ある攻撃。

ただ、藤本は試合後、自身のブログでこの時間帯のことを「イケイケになる気持ちはわかるけど、そこでも一つ冷静になることが重要」と釘を差す。それは決して引き分けでOKということではなく、相手の方が焦っているのは明らかであり、バランスを崩すのを見届けそこにつけ入る隙を見つけるべきだと。北嶋も「玉砕覚悟の攻めはよくない」(J’s Goal)という表現で、同じことを指摘していました。この両ベテランに共通した試合勘は、とても重要な気がして。結果、前節のガンバ戦と同様勝ち越せなかった、引き分けて残念だったとしても、相当のリスクを感じていたことが、“玉砕”という過激な表現に込められているように思います。

われわれも引き分けで御の字とは当然思っていない。ただ、特に前節と同じように、追いついての引き分けゲームは、「よく追いついた」というトーンがベースになってしまって、逆にどうも、課題や反省点が忘れ去られてしまいがち。失った勝ち点は2。追いつかれても追いついても、あくまで引き分けは負けに等しい。重要なのは、何が課題だったのかという冷静な反省だと思うのです。

ひょっとしたら北嶋も藤本も、ピッチを離れたから見えたこと、感じたことなのかも知れません。ならば、この時間にピッチ上でそれを感じ、統率できるのは、今の熊本では誰なのかということになります。まだビハインドの段階、2枚目のカードとして投入された養父。攻撃的カード。同点を狙ってのことであることは当然で、ピッチ上の同僚も大いに鼓舞されたことは明らかですが、やはり入ってすぐに1つ2つ、指さして何らかの指示があってもよい。ベンチで感じていたこと。あるいはコーチから指示があったことを。それが途中から入る選手のもうひとつの役割だし、それが個人で打開するのではなく、組織で戦うということにつながるのではないでしょうか。

先制してからの東京ヴェルディのぎこちない試合運び。多くの時間を残しながらも、とにかく勝ち点3を意識するあまり、あからさまに守りに入ってしまって、ゲームのバランスを大きく崩してしまった。後半の終盤の熊本の攻めも出色でしたが、それを招いてしまったのは、東京の自滅ということも大きい。そんな相対的なことを勘案して、われわれも少し気難しいことを書いてしまいました。

ただ、最初から意図したものではなかったにせよ、試合のなかでの対応から生まれたゲームの流れ。これだけ尻あがりで、先制されてからもその勢いと粘りはまったく変わらず、衰えなかった。連戦のなかでこれだけ動けたのは自信にしていいと思います。次節こそホームで勝ち点3を。結果を残した高橋を先発で、北嶋はやはり途中投入がいいのではないか(などと言ってみます)(笑)。

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