3月31日(日) 2013 J2リーグ戦 第6節
熊本 1 - 1 富山 (13:03/うまスタ/5,012人)
得点者:7' 西川優大(富山)、77' 黒木晃平(熊本)


“あの場面以外は…”というのが、この試合の“たら、れば”でしょう。試合後の吉田監督が、「ちょっとした隙で失点してしまうというのが、特に前半の立ち上がりであると、なかなかゲームをうまく運べない」、そう言いたくなる気持ちもわかる。1点ビハインドを背負って、残り90分近くを戦わなくてはならないというのは、もちろんゲームプランには全くなかったわけで。

またもや1対1。カバーもフォローもなし。裏を取られるタイミングと位置取り、地のスピードであっさりと振り切られてしまう。攻撃に人数をかけ、少ない枚数で守る、という単純なコンセプトではないはず。プレーの“軽さ”と言ってしまっていいのかどうか。別に、選手に真剣味が足りないと言っているわけではなく、あれだけラインを高く保つならば、その備え、緊迫感は尋常のものではダメだろうと。強いて言えば、同じ失点パターンが続くのは、課題のハードルがいかに高いか。それを共有できているかということかなと。

20130331富山

前節と同様で、試合開始直後の“入り方”が悪い。「G大阪戦は立ち上がりは良かった」「その時は我々はチャレンジャーという感じだった」「もしかしたら少し受けて立っているところがあるのかも分からない」と指揮官はこの2戦を悔やみます。

富山にしても、熊本のウィークポイントであるDFラインの裏を、一発であっさりと突いて早々と先制したことで、逆に拍子抜けの感があったのかも知れません。その後思ったほどのプレスもなく、連携のミスも目立つ。しかし、そんな富山に対して熊本も“お付き合い”している感じ。アタッキングサードまで持ち込んでも、最後のフィニッシャーとの意識が合わない。撃てるところで、もうひとつ崩し切ろうとパスを選択して潰される。片山のクロスにも切れがない。

「前線で起点を作るために」(吉田監督)、後半から高橋に代えて北嶋を投入。逆に前半を反省した富山は、後半に入って強烈にプレスを掛けてきたように見えました。早く同点にしたい熊本と、追加点を取りにきた富山の正面からのぶつかり合い。

その状況を見た吉田監督の、次のカードがこの試合のポイントでしたね。原田を下げて、怪我から復帰したばかりのファビオを前線に投入。4-1-3-2に見えたのですが、黒木をアンカー、藤本を頂点とするダイヤモンドの中盤だといいます。相手の厚い中盤に混乱をもたらそうという意図。これが奏功します。

同点の場面は、オープンな展開になった77分。最終列の吉井から貰った黒木が、ファビオに預けると、自ら猛然と上がっていく。すでにエリア内にいた齊藤までもを大外から追い越すと、ファビオから出されたパスをダイレクトで撃ち抜いた。「キーパーは多分、クロスを意識してたから」と素早く見切ると、角度のないところからニアにぶち込みました。

開幕前の練習試合からレギュラーポジションを取り、吉田サッカーを体現する“申し子”のような彼の名前(活躍)を、いつ書けるのか、早く書きたくて仕方がなかったのですが、ようやくやってくれました。高い技術に裏づけされた安定したプレーぶりもさることながら、誰もが感心する献身的な運動量。機を見て攻撃に参加する姿勢は積極的で、前半もこの男のドリブルからの惜しいシュートが。後半この時も、ひとりアンカーという重責を任されている状況での“瞬時の判断”。試合前から「常にゴールは狙っている。1点取れれば乗っていける予感がある」(スカパー!)と言っていた黒木。乗ってほしい男です。

同点に追いついた熊本は齊藤に代えて養父を投入。再びダブルボランチ、4-4-2に戻します。これはもちろん逆転を狙っていくものの、落ち着きも持とうという意思のカード。前節、藤本、北嶋が憂いた“玉砕”モードの反省を見た気がしました。一方の富山は木本、苔口といったスピードスターを相次いで投入。完全に熊本DFの裏狙いを鮮明にしてきます。

一度リセットしたあと追加点の隙を窺おうという熊本でしたが、時間が足りませんでしたね。やはり前半のモヤモヤとした時間帯がもったいなかったし、後半早々は意外なほどの富山の圧力に少々手こずった。

富山が攻め込んでもバイタルから早々と撃ってくれたのもありますが、“あの場面”以外は、そうそう決定機は作らせませんでした。流れは色々ありましたが、熊本は富山の厳しく、早い寄せに対しても、決してロングボールを蹴らないぞ、という決意めいたものさえ感じるように、繋ぐ繋ぐ。ほぼ90分間、息もつかせず、激しくコンタクトして奪い、富山のプレスをサイドチェンジとワンツーダイレクトでかわしまくる。

但し、それは富山に攻撃面でサッカーをさせなかったという点において。富山にしてみればあれでよかったし、意図したことではないにせよ、あの流れのなかではよく粘り、よく守って、ゲームの裏側ではこれまた支配していたようにも思える。90分間、これまた途切れず走る。これが安間流なのか。真面目なチーム。そういう意味では、難しい相手であったし、内容の濃い試合でした。

3試合連続で先制されてから同点に追いつくという試合。引き分けは敗戦と同じというわれわれの見方はこれまで通りです。ただ、富山の変則的なシステムに対しても何ら戦術を変えず、自分たちのサッカーでぶれずに“勝ち”を目指した吉田・熊本。前述のように各試合、試合の入り方こそ違いがありましたし、東京Vも予想したほどのプレスがなかった。今日この富山が、ここのところでは一番プレスも強く、走り、最も上り調子のチームではなかったでしょうか。そういう意味では、同じ戦い方、同じ同点劇だからこそ、自チームの出来(完成度)が比較しやすいように思えます。

もうひとつ。この試合を見ていても気づかされる今年の特色は、中盤でのボールの奪い方。相手への体の入れ方、当たり方。前を向くテクニック。そしてこの新監督の教えと戦術にフィットしているのが仲間であり、齊藤、そして藤本だと思いました。今季の藤本はフリーマンであり、バランサーでありパサー。ピッチ上欠くべかざるその存在は、この試合で遂に今季初の90分間出場を果たしました。そして、実は今シーズンの養父が、なかなか途中から試合に入っても消えていることが多く感じるのも、今季のこのチーム戦術に訳があるのかと。養父の使い方はどうすれば一番効果的なのか。縁台将棋さながら、われわれは勝手に頭を悩ませています。昨季は藤本に対して悩んでいたんですが(笑)。

3月3日に開幕したわれわれのリーグも、早くも1カ月の日程を終えました。選手入場時にタオルマフラーを回すことにも徐々に慣れ、そして今節は新しく「HIKARI」の熱唱も加わりました。試合前のピッチ練習に現れた選手たちに注入する“魂”。共に闘うという“儀式”。それは感動的で、他のどのチームでも見たことがない、実に熊本らしいオリジナルのパフォーマンス。だからこそ今日こそはホームで初の勝ち点3を奪いたかったのですが…。

ホームのゴール裏で歌い踊る「カモン・ロッソ」は、4月17日の愛媛戦までおあずけ。溜りに溜まった鬱憤の発散で、そのときは大騒ぎになるかも知れませんね(笑)。もちろん、その前のアウェー連戦を一戦一戦大事に戦って、2連勝を飾って帰ってきてくれることが、まず望みですが。さあ、反転攻勢の4月になる予感がします。


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