4月28日(日) 2013 J2リーグ戦 第11節
札幌 1 - 3 熊本 (13:03/札幌厚別/6,003人)
得点者:13' 前田俊介(札幌)、50' 仲間隼斗(熊本)、57' オウンゴ-ル(熊本)、88' オウンゴ-ル(熊本)


雪のあとは、またも風のゲーム。今季も何度か強風下の試合はありましたが、今日のそれはちょっと違っていた。これまで経験したことのないような、とんでもない強風。いやこれはもう烈風。セットプレーのボールがまともにセットできない。こんな状況はわれわれも見たことがない。ある意味、”サッカーをやれるような状況ではなかった”のかも知れません。

そして、これだけの風になると、風下はどうにもならない。久々、風上に圧倒的なアドバンテージがあった。コイントスに勝ったのは札幌。当然、風上を選択する。熊本も”いつも通り”の風下で、前半を我慢することから試合に入ったのですが。

20120428札幌

南のキックもハーフウェイラインを越えるどころか、戻ってくる。これはヤバイなと思っていた前半もまだ13分。札幌・前田がダイレクトで左にはたくと、岡本が左サイドからPAに侵入。深くまでえぐってマイナスパスで前田に戻す。熊本のDFは完全に振られてしまって。前田が落ち着いてゴールに流し込みます。早い時間帯での失点でした。

その後も、強風を背にした札幌が嵩に懸かって攻めたてる。上里の低い弾道のFKが、ゴール前を襲う。ちょっとでも触ればゴールというキックに脅かされる。耐える時間帯が延々と続く熊本。一方的。

原田からのロングボールにエリア内でDFをかわした養父のビッグチャンス。しかしシュートは右に大きくそれる。数少ないチャンスなのに。これも強風のせいか。サイドを使おうとする横パスまで、カーブが掛かって戻される始末。

「なんとかこのままで前半を終えたい」。それが試合を観ていたわれわれの正直な気持ちでした。いつもなら早く同点にしたいと思うところ。しかし、今日は「後半が早く来てほしい」と願った。こんな気持ちは初めてでした。

「前半よく耐えた」。ハーフタイムで吉田監督がイレブンを賞賛し、鼓舞したこの言葉が、結果的にこの試合のすべてを物語っているように思います。試合後はさらに、「前半を1失点で抑えたところ。そこが今日のゲームの勝因だった」と言うように。

まるで野球の表裏の攻守交替のように、後半は熊本の試合になりました。50分、札幌GK杉山の高く上がったパントキックが風に煽られ、なんとPAまで戻される。札幌DFがなんとか掻き出す。しかしそのクリアボールも高く上がってしまい再び戻される。高いバウンドを収めきれないところ、混戦を制して仲間がすかさずゴールに押し込みます。後半立ち上がりの同点弾。

そして7分後には養父のFK。GKがパンチで逃れるものの、DF奈良の”逃げ足”に当たってオウンゴールを誘う。逆転。

ゴールに向けて芯をとらえて正確に蹴れば、それがシュートになってしまう。集中を欠きがちな、バタバタした試合展開のなかでも、選手は逆に落ち着いて見えたのは、そのせいか。さらに言えば、ピッチのどの位置からでも狙えるならゴールを狙っているような。それはまさしく”サッカーの原点”でもありました。

88分には駄目押し。左サイドから作ったあと養父のクロスを、代わって入ったばかりの札幌・松本がクリアミス。

風の影響。相手のミス。オウンゴール…。久々の勝利も流れの中での得点がなかった、などと注文を付ける気はまったくありません。それどころか3得点とも体ごと押し込んだような得点。オウンゴールというのは、相手を押し下げて、後ろ向きに守らせて、こちらもゴールに詰めていて、正確なクロスが来て、そして初めて生まれるもの。だから、2点目も3点目も、チームの得点だし、決めたのは養父なのだと思います。

これまで繋ごう繋ごうとするあまり、逆にゴールマウスが遠かった。今までチームに足りなかったものを、厚別の風が教えてくれたようなそんなゲームではなかったかと。

敵将・財前監督が「点を奪われたのは技術の差。熊本のほうが止める、蹴るといったプレーをしっかりやっていた」とコメントしていますが、それは、シュートから逆算したプレーができていたことを評価したということではないでしょうか。いずれにしても、この「止める、蹴る」ができているという評価は、われわれとしては最も嬉しい褒め言葉です。

しかし、なによりこの試合のMVPは、仲間。ですね。

翌日の、熊日は「汚名返上」と見出しをとった。しかし、われわれには、そういった意趣返し的なものよりも、あの長崎戦を糧にして、また大きく成長したように見えました。

同点弾の後、逆転のOGの後。ゴール裏を煽るように、両手を広げて精一杯の喜びを表していたのは、決して嬉しかったからだけではないように見えた。不振のチームにあっての久々の得点、そして逆転。この流れを渡すまいと、必死でゲームをアゲていた。そういうふうに見えました。

71分。相手ディフェンダーに引っ掛けられて、バランスを崩し、よろけながらも踏ん張り、持ちこたえてボールをキープ、さらにゴールに向かおうとプレーを続けた。プレーが途切れたところで相手選手にイエローが出された。スカパー!解説者も称賛していました(ちょっと趣旨が違うようにも感じましたが)が、われわれにとってもこの試合一番の印象に残るプレーでした。

ファウルを貰おうなど微塵もない気持ちの強さ、前に進む意志。仮に膝をついても、プレーを続ければ、審判はアドバンテージを見る可能性もある。相手がセルフジャッジでプレーをやめれば大きなチャンスにもつながる。これもサッカーの原点を感じさせる。これまでの彼のプレーには、なかった”行為”。これがまさしく彼に欲しかったプレー。完全に”あの試合”で一皮剥けた。次のゲームでは、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。楽しみになってきました。

しかし札幌。後半あれほどのバタつき。ホームなのに。それについてはJ's Goalのレポートで 斉藤宏則氏は「平均年齢が27.00歳の熊本が、同23.36歳の札幌に悪条件のなかで我慢強く競り勝った」と”経験の差”をあげています。南と杉山の差は、確かにあったと思う。また札幌の上里に脅かされたものの、強風を背にした後半、原田、養父というこれまた経験豊富な左右のキッカーがいたことも大きかった。

でも・・・。

きっと本当に強いチームは、こんな状況でも、風のせいにも、雨のせいにも、ピッチのせいにもせず、何食わぬ顔で普通のプレーをするのだろうなあ。コンディションに合わせたプレーを、正確に積み重ねていくんだろうなあと。

なんか、7試合勝ちなしから脱した久々の勝利は、1つの白星、勝ち点3以上に多くのものを、熊本にもたらしたようにも思える。”サッカーをやれるような状況でなかった”ようで、実はサッカーの原点が隠された試合だったのかも知れません。

最後に。表示気温は7度。烈風と冷たい雨のなか、声援を送り続けたゴール裏のサポーター。体感温度は限りなく零度、いや多分、氷点下だったのではないかと思います。そんななかでの後押し。ありがとうございました。この勝利の余韻とともに、しばし温まってください。

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