7月20日(土) 2013 J2リーグ戦 第25節
栃木 0 - 1 熊本 (18:03/栃木グ/4,676人)
得点者:79' 片山奨典(熊本)


前半戦、水前寺での対戦では1-4で大敗を喫している栃木を相手に、アウェーの地でとにかく勝った。スカパーの画面を通じて、本当に久々に見る「カモン!ロッソ」。画面越しにではありますが、スタンドで飛び跳ねるサポーターのその腕に、声に、確かに力がこもり、思いが溢れそうになっているのがわかります。これだけのアウェーへのサポーターの数。これも難敵・栃木が相手だったからでしょうか。

金曜日朝刊の熊日予想フォーメーション。その分析は詳細でした。前節、岐阜戦途中から3-4-3にしたことを踏まえ、栃木戦はスタートから3バックを予想。18日の練習では両サイドのMFが最終ラインに下がる動きを確認し、池谷監督代行の「守備に戻るときは素早くスペースを埋めることが大事」というコメントを引いていました。しかも橋本が最終ラインに下がり、片山・黒木・原田・藏川というMF陣。何がなんでも守るという決意のようなものさえ感じました。

「守りが乱れてきたら、5-4-1の守備的な位置取りに引くよう指示している」という試合後の池谷代行のコメントもそれを裏付けている。対する栃木・松田監督は「熊本は3バックがこなれておらず、後半は4-4-2も想定したが、徐々に慣れたようだ」とみている。

栃木もここ6試合勝利から遠ざかり、前節の敗戦でプレーオフ圏内の6位の座を福岡に明け渡してしまいました。優勝、昇格を掲げるチームとしては、このホームゲームは下位・熊本を相手で立ち直りのきっかけにする試合だと“計算”しているに違いない。試合序盤から押し込む攻撃的姿勢に、その気持ちが表れていました。

20130720栃木

厳しいプレスに手を焼き、ボールを保持できない熊本。人数を掛けた栃木の猛攻。失点も時間の問題かと思われましたが、跳ね返し、詰めて、最後は身体を投げ出し凌ぎ続けます。杉本の決定機は守護神・南がスーパーセーブ。

ただ、押し込まれてズルズル下がったということではなく。押し込まれたら戦局に応じてのオプションのひとつとして準備していた。-----これは見た目は同じでも、まったくの別物。プランだと思ってやるのと、あわててて対応するのとではまったく違う。

「前半は『耐えよう』という共通理解があった」と吉井が言い、北嶋も「前半は割り切って守る意識を共有できた」と言う。

前節のエントリーでも引用したように、吉田前監督交代のきっかけになった飯田本部長の要望3点。①勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び、②攻撃時のリスク管理など守備の改善、③チーム内の意思統一

今日も、その意識を感じられたし、特に③は完全に一本の筋が通っていた。

0-7の惨敗を喫した北九州戦。われわれは「誰もいない。誰も行かない」と書きました。しかし、今日のこのゲーム、前半は確かに3バックが「こなれていなかった」こともあって攻め込まれましたが、指揮官のプラン通りに決定的なスペースは消されており、決定機にも誰かが行っていてフリーにはさせなかった。

最終的な栃木の精度の低さにも助けられたようにも見えますが、やはり、これは守備時のプレスの速さ、集中の高さとみるほうが正しいでしょう。

それでも、あれだけゴールマウス近くで戦えば、どうしてもファウルが避けられず、セットプレーのリスクは高かった。今日もかなりな数のFKを与えています。そこは不安の種でした。

ハーフタイムの指示で、松田監督は「うまくいっている。このまま我慢強く続けていこう」としました。当然の発言だったでしょう。一方、池谷代行は、「セカンドボールを取れないと試合にならない!」と叱咤した。そのうえで、ハイプレスの栃木も、「必ず緩くなるので後半必ずチャンスが来る」(J's Goal)と読んでいました。

その言葉どおり、後半から熊本はセカンドボールを拾いだし、「サイドチェンジを有効に」使い出し、「相手の背後を取る」。

この試合の決勝点となった得点は、79分。攻撃をフィニッシュできない栃木のボールを、自陣深くで奪ったのはファビオ。藏川に預け、堀米。「完全にコースが見えた」という堀米の右サイド奥へのスルーパスに追いついたファビオは中央齊藤にクロス。齊藤は持ち替えてさらに左、遥か後方から駆け上がってきた片山にパス。片山がダイレクトで左足を一閃。GKがこれをはじいてゴールネットを揺らしました。

堀米がファビオに長いグラウンダーを通した瞬間には、まだ自陣のエリア付近にいた片山。「逆サイドの僕が行くしかない」(熊日)と思ったという。栃木DFを全てに遅れを取らせた鮮やかなカウンター攻撃。守備重視で点を取るにはこうして一人余らせるしかない。そんなシーンでした。

「サッカーは90分。90分の駆け引きで勝てた感覚が自信になる」と、試合後北嶋はtwitterに書きました。ハーフタイムには「『こういう試合をしたたかに勝とう!ワンチャンスで仕留めよう。今日はそういう日だ』とみんなで確認しあった」のだと言います。

こうやってワンチャンスが得点に結びつきましたが、やはり今日のゲームは無失点を評価すべきなのだろうと思います。実に11試合ぶり。ゲームプランは失点しないで、まずスコアレスドローをめざすことだったはず。前半の猛攻に、シュート数ゼロは致し方なかった。そして、主に相手の出方(栃木のペースダウン)に対応して、うまく戦い方を整理できた。まさしく「ワンチャンスで仕留めた」。

「決めるところで決めきれないと何が起こるかわからないですよ」と、スカパーの実況アナウンサーは何度も何度も不安を繰り返しましたが、熊本の”90分の駆け引き”に栃木は膝を着いた。こんなドキドキしびれるような勝利ゲームを見たかった。

試合終了を告げるホイッスル。選手も、スタッフも、ベンチも、ゴール裏も、誰彼かまわず抱き合う。長かった、重苦しかった鬱憤を一気に晴らすように、喜びを爆発させる。涙を流すファンの姿も。

9戦勝ちなし。降格圏に限りなく近づいたチーム存亡の危機。監督交代という初めてで、そしておそらく最後の一手を打った熊本。

直後の岐阜戦に終盤の失点で引き分けた。誰も口にはしないし、言葉にするのが憚られるような。しかし、実はこの試合は、チームの歴史の分水嶺になるようなゲームだった。

勝負の世界とはいうものの、この”賭け”ともいうべき大勝負に出た熊本。そして、多分、この勝負には勝てたのではないか。そうわれわれは思います。

下は向かない、上も見ない。前も気にせずただひたすら、この時を戦う。泥臭く戦う。われわれの今は、まさにそんな感じではないでしょうか。


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