9月8日(日) 第93回天皇杯 2回戦
熊本 1 - 1(PK 4 - 3)徳島 (16:00/うまスタ/2,530人)
得点者:31' ドウグラス(徳島)、77' 養父雄仁(熊本)

延長戦突入が決まり、ピッチ脇に集まった選手たちが戦いの準備に余念がない短い時間。突如ゴール裏から湧き上ってきた「HIKARI」。いつもよりアップテンポなドラムで鼓舞する。それは「この試合は勝つぞ!絶対勝ちに行こう」という熱い後押しでした。

リーグ戦4連敗。降格圏がギリギリに迫っている今の熊本にとって、この試合の意味付けは難しいものだと思っていました。リーグ戦に集中したい、選手に怪我をさせたくないという気持ちの反面、ホーム公式戦で“負け癖”をこれ以上付けたくもない…。それはわれわれだけの屈折した思いだったのかも知れませんが、先発を少し入れ替えた布陣は、その微妙な雰囲気を反映しているように見えなくもありませんでした。

20130908徳島

久しぶりの先発となった五領、そして大迫が右サイドを中心にアグレッシブに動く。養父も止める、出す、その技術の高さを見せる。

徳島には相性の悪い津田の姿はなく、その代り高さのある2トップが。キムが再三裏への飛び出しを狙う。

ただ、やはりチームとしての課題の修正は一夜にしてならない。攻め込んではいるがなかなかフィニッシュまで行けない熊本。対する徳島の反転は素早い。31分、左SBのアレックスが駆け上がるとクロス。中にはドウグラスしかいなかったものの、競った矢野の頭の上から高い打点でヘディングシュートを決めました。まさにピンポイント。クロスの精度の差でした。

まるで恒例のように先制点を奪われた熊本。早くもがっちりとブロックを固めた徳島の守備陣形の前で、“持たされ”ている感もある。ボールを奪ってからの切り替えの遅さにはスタンドからブーイングにも似た声があがる。

ただ、後半から入った仲間、藤本が齊藤を助け、橋本が持ち上がり、黒木がミドルを狙うようになると、まだ選手間の呼吸はちょっとズレてはいるものの、少しずつではあるが、ゴールに近づいている予感が・・・。

同点弾はスローインから繋いで、バイタルでフリーになった養父が狙い澄まして右足を振り抜いた。ボールはキーパーの届かないところから孤を描くようにカーブして、ゴールの右上隅に突き刺さりました。

俄然、勢いを増す熊本。しかし、それに水を差したのは今日も不可解な判定が多かった野田主審の笛でした。徳島のCKの場面。ゴール前のいざこざで徳島の選手が倒れると、なんと矢野にこの日2枚目のイエローが提示されてしまいます。ひとり少なくなった熊本は4-4-1にシフト。ブロックをしっかり作ってカウンター狙いに戦術変更を余儀なくされます。なんとか守りきった後半。

「HIKARI」の熱唱に後押しされた熊本は、温存していた原田を延長戦になって投入。黒木を右SBに下げます。狙いがシンプルになった分、迷いなくカウンターでゴールを目指す。仲間がドリブルで持ち上がってシュートを放つ。藤本を追い越した黒木が右からグラウンダーのクロス。齊藤がスルーして仲間が撃ちますが、至近距離のシュートをGKがファインセーブ。

高崎を入れた徳島も、アレックスのサイドから攻撃の手を休めない。しかし、熊本も粘り強く対応する。この日がデビュー戦となったGK畑の好セーブにも助けられる。

両者とも相当に疲れていました。疲れているがそれでも走る。もう熊本の選手を突き動かしているのは、ここがホームだということ。ホームスタジアムの声援が選手を走らせている。そう思わせました。

トーナメントの決着をつけるためにPK戦に突入したときには、われわれはもう勝ち負けはどうでもいいやという思いがありました。ここまで選手の気持ちを見せられれば結果はもうどちらでもいいのだと。

守るべきゴールにゆっくりと向かう畑に向けて、ゴール裏からすさまじいばかりの拍手と「みのる!」コール。そして、徳島の選手がPKに立つときのブーイング。
徳島の2人目のキッカー、青山が枠を外すと、5人目のアレックスのシュートは畑が横っ跳びで弾いた。その瞬間、90分+30分の長い長い勝負に終止符が打たれ、ピッチサイドからコーチ、スタッフたちも一目散に駆け寄ってくる。

いつの間にかすっかり暗くなった秋の夕空に「カモン!ロッソ」のチャントが響きあう。ようやく。ようやく。リーグ戦ではないけれど、これが待ちに待ったホームに響く勝利の歌。

殊勲のGK畑の長身の雄姿がスタンドからもひと際目立つ。「ヒーローになるチャンスだということだけ考えて」プレーしたと彼は言う。同点弾の養父は、「悔しい気持ちをピッチで出そうと」思っていたと明かします。大迫は前節結果を残した。五領は行ける所までアグレッシブに行った。ヒーローになった者、なれなかった者はいるけれど、緊急避難的に使った黒木を入れた4バックを含め、指揮官に「迷うようなオプションも出てきたので、これは次につながるんではないかな」と言わせました。

Jに上がってから毎年、天皇杯に参加する意義についてわれわれなりに自問してきました。タイトなスケジュールのなかで行われるカップ戦の意味。天皇杯自体の存在の意義。

しかし今日の試合に限っては、今の熊本の状況を打開するという意味で大いに意義がありました。次々とやってくるリーグ戦の日程のなかでは、リスクを避けるあまり、新たな選手起用がどうしても消極的になっていたのではないでしょうか。今日は控えにまわることの多かった選手たちに試合勘を取り戻させ、自らアピールできる絶好の機会になった。それも同じカテゴリーの(しかも目下絶好調の)チーム、徳島との公式戦で。

そしてなにより、PK戦の末とはいえ、久々の、本当に待ち焦がれていた「勝利」という結果を得ることができたこと。内容はよくても結果が伴わないという状況が長く続いていたからこそ、勝利という結果がどうしても欲しかった。「勝つ事がこんなに嬉しいことか、そしてこんなにスタジアムが盛り上がるんだということを改めて感じたゲームでした」と指揮官が言うように。

ファンも同様でした。どんな内容であれ、勝利という結果がなにより欲しかったのです。だからこそ、今日のスタジアムは一体感が溢れていました。あるときは叱咤し、あるときは背中を押すことができたのではないでしょうか。

この勝ちは必ずリーグ戦にも好い影響を与える。きっと悪い流れを断ち切る契機になる。天皇杯を戦ってそんな気持ちになったのは初めての経験でした。

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