11月17日(日) 2013 J2リーグ戦 第41節
熊本 0 - 1 横浜FC (14:04/うまスタ/12,003人)
得点者:90'+3 小野瀬康介(横浜FC)


北嶋の現役引退・ホーム最終戦は、朝から小雨模様。時折り薄日が射したり、また曇ったり。冷え込んだ一日。そして、ゲーム内容もこの日の天気のように、なかなか定まらないものでした。

試合終了後、スタンドでたそがれていると、大学生のグループからアンケートに協力を求められ、記入していくと「今日の試合に満足しましたか?」という質問項目。さて。どうしたものか。「試合結果」には全く「不満」なのは間違いないけれど…。しかし、「試合」あるいは「試合内容」はと言えば、全然違うものがありました。

20131117横浜

「点をとらせようとする雰囲気がありがたかった」と北嶋。

当然ですが、いつもとは違う、特別なゲームでした。どこからエネルギーが湧いてくるのかとも思えるような、球際の厳しさ、セカンドの奪取…。試合開始早々からチーム全体が燃えているような気迫を感じさせる。横浜FCにシュートさえも打たせない。さらに、運動量は落ちるどころか、ますます迫力を増していく。

ゴール裏も吹っ切れたような、何か祭りのような勢い。皆が笑顔。これもいつもとちょっと違う。今期最高の12,000人が詰めかけたスタジアムは、後半4分、北嶋の交代登場で一気に、一気に熱くなっていきます。

しかし、いつもと違うゲームは「勝利」というところからは、少しずつズレていたのかも知れません。「押し込んでもチャンスになっていない」と南は言う。「皆のゴールへの意識が強くて真ん中真ん中にいってしまった」と言うのは、池谷監督代行。

クロスもパスも、とにかく可能であれば北嶋に合わせる。相手にとっては、ある意味守りやすい。

選手は気合も入り、主導権を握ってはいたが、こと攻撃ということで言えば、いつものゲームらしくはなかったと。

「失点してでも勝ち点3をとるよう指示した」と指揮官は言うものの、実際は全員がリスクマネジメントが出来ていました。自陣で不利な体勢なら、迷わずプレーを切っていたし。シュートも多かったが、中途半端に終わるより、きちんとシュートでゲームを切ってしまおうという意図ではなかったかと。不用意に引っ掛かるのを恐れて、前線にロングボールをあてる場面も多かった。

攻撃のリズムと同様に、吉井の怪我というアクシデントもあってか、ベンチワークもいつもとは違う流れになってしまったような。後半24分にして、3枚目の大迫を切ってしまいます。早くなんとかしたい、といういつもと違うようなベンチの思いも伝わる。

しかし、それがこのゲーム。そんなスタジアム全体の思いを乗せたゲーム。

「Max! Max! キタジMax! 」。この日、北嶋の登場から、いや試合前のアップのときから、ゴール裏から何度も何度も繰り返された北嶋のチャント。それが渦のようにスタジアム中の手拍子と一体となっていく。

試合はついにスコアレスのまま後半のアディッショナルタイムに突入。この日ほど、残り時間が少なく感じたことはありませんでした。いやそれは、このまま終わらないでほしい、北嶋と共に戦う時間が、永遠に終わらないでほしいという切なる気持ちに他なりませんでした。

しかし、結末は残酷にやってきました。横浜の3枚目のカードで入ったパトリックが、熊本DFを背負って落とすと、小野瀬がバイタルから思い切りよく振りぬいた。敗戦を決定づけるゴールが、南の手をかすめてゴールマウスに突き刺さりました。

試合終了の笛。がっくりと膝をつく熊本の選手たち。引退試合を勝利で飾れなかった悔しさがあふれるのか…。

思うようにいかないのが人生。思うようにはいかないのがサッカーではあるものの…。こんな結果とは思いもしなかった。

しかし、試合を終えた横浜FCの選手たちは次々と北嶋に歩み寄り、握手を求め、抱き合い、その健闘を讃えている。改めて“それほどの選手”が熊本に在籍していたのだということを実感させます。そしてここ熊本でユニフォームを脱ぐということも…。

試合後の「ありがとうセレモニー」で挨拶する北嶋の背後には、松葉づえをついて立つ吉井の姿がありました。北嶋も挨拶のなかで、吉井のケガについて「ピッチに戻ってプレーできるようなケガではなかったのに、それでもプレーを続けようとしてくれた」と。

われわれの目から見ても、明らかに尋常ではない倒れ込み方でした。しかし、チームスタッフにバツを出させないような勢いで戻っていく吉井。北嶋の出番も来ないうちに、こんな時間帯でピッチを去るわけにはいかない。北嶋と同じピッチで少しでも長い時間を闘いたい。そんな気持ちが伝わってきました。

誰よりも悔しく、泣き顔なのは吉井だったのでは…。特別に重要な試合。そのゲームプランが自らの負傷交代によって大きく狂ってしまった。少なくとも、何もなければ吉井に交代カードというような想定はなかっただろうに。

北嶋のために編集されたビデオを見てウルッときて、両親からの花束贈呈にもらい泣きして…。去年の福岡戦で決めた北嶋を後ろから抱きつきに行った姿が、オーロラビジョンに流しだされると、当の藤本主税もこらえきれず目頭を押さえていた。スタンドの前も後ろも、右からも左からもすすり泣きが聞こえてきて。

試合結果だけがサッカーじゃない、よね。

北嶋の「やりますか!」の声で、カモンロッソが始まる頃には、これまた記憶に残りそうな痛い痛い敗戦を通り越して、北嶋という稀有のプレーヤーの引退を惜しみ、その健闘を称え、サッカーを、この時間、この空気を共有できる喜びに心底浸っているようなスタジアム。

いつまでも、いつまでも名残惜しそうにファンに手を振る北嶋秀朗。

われわれに、そして彼に残された試合は、あと一試合。相手は昇格の決まった神戸。この苦しかったシーズンの思いも乗せて、最後まで後押しします。


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