3月2日(日) 2014 J2リーグ戦 第1節
熊本 2 - 1 福岡 (15:05/うまスタ/9,679人)
得点者:33' 片山奨典(熊本)、52' 園田拓也(熊本)、57' 坂田大輔(福岡)


先週の水曜日。古くからの戦友であるクラブのスタッフS君と、開幕へ向けての激励、壮行会と称して今年も飲みに行きましたが…。しかし、その席で聞いたシーズン直前のチームのコンディションの良さも、何かしら鵜呑みにできない、そんなわれわれでした。それは、昨年の同じ時期に聞いた、あまりにも根拠に乏しい“好調”さのなかで、期待だけが膨んでしまって、手痛いしっぺ返しにあった反省からでした。

しかし、彼はさらに強い口調でこう言いました。「開始25分までに熊本が先制するでしょう」「もし、そうでなくても福岡には勝てると思います」と。まあ、酔った勢いはあるにせよ、いったいどこからくるのか、この自信は…

20140302福岡

確かに彼が「福岡は開始早々びっくりするでしょう」と言ったとおり、熊本の前線からの激しいプレスと、相手の高いDFラインの裏を突こうとするパスの狙いは、福岡DFを次第に混乱させていきました。新生・小野ロアッソを初めて公式戦で見るわれわれも、序盤からの数々のシュートシーンにワクワクしました。しかし、だからといってゴールを割るまでには至らない。

時間がたつに従って福岡も立て直していく。電光掲示板の時間表示は、S君が言った”約束の”開始25分を過ぎようとしている。

歓喜が訪れたのは、いくらか劣勢になった33分のことでした。CBの篠原が得たFKのチャンス。キッカーは右足が養父で、左足はルーキーの中山。おそらく用意されたサインプレー。養父が壁にたつチームメイトに指示を送っている”ふり”をしている間に、中山がちょこんと横にボールを出した。そこに助走をつけた片山が左足を振りぬいた。アウトに掛かったボールの軌道は、GK神山を逆に動かして、ネットに突き刺さりました。時間は押しましたが予言通りの”先制点”でした。

後半は、MF森村を早々と諦めてFW石津を入れてきた福岡に、さすがに押し込まれ始め、危険な場面が増えました。しかし、福岡のCKの流れから仲間が奪って持ち上がると、右からSB園田が猛然と駆け上がる。仲間からのパスを、園田がダイレクトでGKの頭を越えるループシュート。追加点。

しかしその5分後には、福岡・坂田に1点を返される。苦しい時間帯。それでも、失点した直後、熊本イレブンは円陣を組むように集まり、全員で何かを確認しあう姿が。それは、昨季までの熊本には見られなかったもの。練習試合で小野監督が指示したことでした。失点したら一度集まれと。

そこから終了までの長い長い30分あまり。お互いにいくつかの決定機があり、また、思わず目をつぶったピンチもあり、それをしのぎ切っての終了の笛。

足を攣った中山を五領に代え、仲間を岡本と交代させて推進力を維持し、追加点を狙おうと動いたあとは、最後、巻を吉井に代えて”守りきる”という明確なメッセージを伝えた小野・新監督の采配。それよりなにより、劣勢の時間帯もベンチにどっかりと座り、微動だにしない様は、「何も問題はないんだぞ」というメッセージを選手たちに伝えているようでした。

新監督を迎え、メンバーも入れ替わり、期待と不安が入り混じって、どちらかと言えば心細い、言いようのない不安のほうが大きい。そんな今年の開幕戦。

試合後、選手、スタッフがピッチ上で歓喜の円陣を組み、ぐるぐると回って思いっきり勝利の喜びを表現した。これも今までにない突然の出来事でしたが、われわれにも、それがごく自然に思われるくらい、こんなにも嬉しい、またホッさせられた初勝利でした。


見渡せば、うまスタを埋め尽くすにはまだまだだけど、スタンドにはおよそ1万人のファン。十年目のロアッソ熊本。十年目の開幕戦。

十年前にはまだ出会ってもいなかったカップルたち。まだ生まれていなかったような子供たち。その頃はサッカー観戦など思いもよらなかったような年配の方々。ひとりひとりのファンの人生と重なって、少しづつ、少しづつスタンドに広がってきた赤、赤、赤・・・。

試合後の監督インタビュー。繰り出される言葉は、単にボキャブラリーが豊富なだけではない。伝わり方、受け止められ方を意識した、心理マネジメント。これはもう、その場にいた1万に近いファンへのメッセージ。ファンとしてのモチベーションを掻き立てられた方も多かったのではないでしょうか。

「最後は選手も消耗しきっていた。それでも走りきれたのは“真っ赤な声援”が背中を押してくれたから」と。

日本サッカー界きっての“知将”。しかし、まずわれわれに見せてくれたのは、背筋の伸びるようなシンプルなサッカーの原点でした。闘うこと。そして走ること。

90分間ノンストップと言っていいくらいのゲームのテンポ。意図の不明なバックパスがほとんどない。ワンツーのためのワンツーみたいなプレーもない。そして目が離せないようなリスタートの早さ。

奪った瞬間に、可能性があれば前線のターゲットを1本でシンプルに狙っていく。犯したオフサイドは12。しかし、それはあくまでチャレンジの結果。合ってはいないが、どれか一本でも裏が取れれば、得点につながる。まだまだ出し手、受け手のタイミングはこれから。そんなことは意に介さないようにひたすら狙っていくところがいい。

シーズンははじまったばかりなのだから。これから、どうなっていくんだろう。どう成長していくんだろう。そう思わせます。照準は開幕ではないということがよく伝わってくる。

これで選手が消耗するのは仕方ないと納得できる。しかし、最後までチームとしてのパフォーマンスは落ちてはいなかったという感じもする。

当然90分のなかではピンチもあり、失点も喫してしまいました。しかしそんなピンチにも、相手シュートの瞬間には、3枚、4枚と体を張った守りがあった。“誰も行かない、誰も居ない”。そんなゴール前を見ることはなかった。

そして、今日のこの戦術には、巻の存在が大きい。いや、やはり小野監督が欲したとおり、小野・熊本の戦術に、巻は必要不可欠の存在なのかも知れないと思わせました。誰よりも走り続けた巻。失点のあとの円陣で、皆に何かを伝えた巻。交代で退く場面でも、選手たちに手を叩いて鼓舞した。この試合のMOMは、誰も異論なく彼だろうと思いました。

小野・新生熊本。これから徐々にその姿が明らかになっていくと思いますが、まず開幕戦で感じたのは、チームとしてのその”一体感”に違いありませんでした。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/448-bd23f4e3