7月26日(土) 2014 J2リーグ戦 第23節
熊本 2 - 1 水戸 (19:03/うまスタ/10,232人)
得点者:39' 船谷圭祐(水戸)、51' 澤田崇(熊本)、77' 養父雄仁(熊本)


「最後は本当に皆、ぼろぼろの感じでしたけども、スタジアムに多く集まってくれた皆さんの声援が疲れた背中を押してくれて、スタジアム中の皆さんとともに勝点3を取ることができたという風に思っております」。小野監督は、試合後そう語りました。

前節・湘南戦。敗れたものの、その戦いぶりを見て“自信より確信に近いものを得た”と書いてしまいました。その流れは(決して勢いではありません)いささかも揺らぐことなく、この試合も続いていました。

梅雨も明け、夏休みに入った最初のゲーム。熊本県民デーと銘打った動員作戦。うだるような暑さ。西日が照らすなか1万人で埋まったスタジアム。キックオフの笛と同時にようやく日が沈みはじめます。

20140726水戸

立ち上がり。熊本も行くが、それを上回るのは水戸。気にしすぎかもしれませんが、前線の鈴木隆行にどうしても目がいく。PKとはいえ前節も2得点。高く強い空中戦。次々と起点をつくられ、ボールを散らされ、ラインを押し下げられ、プレスを剥がされる。ゴール前の狭いエリアもポンポンと水戸の小気味よいパスが通り、後手にまわる熊本。

そしてこの日の、そのストッパー役は橋本。それでも徐々に押し返す。鈴木も強いが、橋本も冷静でした。嫌な動きをされても、肘を入れられても、とにかく自分の役割は鈴木を潰すことと心得ている。

13分。水戸のスローインから広瀬のシュートはあわやゴールポストが跳ね返す。その跳ね返りを狙っていた鈴木のヘッドにGK畑が好反応。片手一本、いやほとんど指一本で掻き出しクリアした。いつもなら決定的な失点シーン。ホッとすると同時に、今日は勝利の女神が熊本に傾いているかも知れないと思いました。

しかし、その後はいくつかあったチャンスも決めきれず。澤田のシュートがポストに嫌われ、その跳ね返りを五領が狙うが枠を外すあたりでは、女神もまだまだ様子見なのかと嘆いた。まさにその直後のゴールキックからでした。

前節、「チャンスのあとにピンチを招く」ということを書いたばかりですが、また今日も。前線で鈴木が落として小谷野に収まる。それを折り返されると、上がってきた船谷に押し込まれてしまいます。警戒していたカウンター攻撃。それもリスタートからの。「ビッグチャンスの後、その瞬間切り替えよう」。指揮官もハーフタイムでそう呼びかけざるを得ませんでした。

「実は前半、もっと早いタイミングで改善しなければいけないところを、私自身、手を打つのが遅れてしまった」「巻も非常にいい働きをしてくれたと思いますし、それだけじゃなく、ハーフタイムで修正点等、チームの意識が統一されてピッチに出て行ってくれたんじゃないかと思っています」。

最近、何度か出てくるコメント。ゲーム中に改善しなければいけないところが出て、しかしその対応が遅れたというもの。と言っても、具体的にはそれがどこなのか。この部分だけは決して教えてはもらえないところ。想像するしかありませんね。

連敗の最中、今日も先制を許してしまう嫌な展開。しかし、チームの成長がはっきりと見えたのはまさにその失点後の時間帯でした。前半39分という時間帯も幸いだったかもしれない。

ホームに1万を超える観衆。勢い込んで取り返しにいくというのは、よくある危ないパターンなのですが、前半はしっかり落ち着いて、やり直す、作り直す。連続失点だけはしない。

「自分自身、点を取られた後も、これはいけるという風に思っていましたし、おそらく私がベンチで感じていたということは、選手もそういう思いを持っていたと思うんです」。

監督も、選手もそう思っていたように、われわれスタジアムのファンも間違いなく思っていました。下を向いて消極的になったり、逆に無理な前がかりでバランスを崩したり。結果、決定的な2点目を失う事態になってしまう。とにかくプレスを弱めない。相手のミスを誘っていく。ゴール裏も失点から逆にボルテージが上がっていきます。

そして後半開始から五領に代えて巻。久々の先発の五領も決して悪くはありませんでした。ワイドに動きまわり、前線をかき回した。けれど巻に”空中戦”を加えられた分、水戸はますますDFラインにプレッシャーを感じたのは間違いないでしょう。

「絶対返すぞ」。ハーフタイムの小野監督の激は、知将というよりむしろ闘将の顔でした。

後半6分、片山のロングフィード。巻の落としから橋本のシュートはバーに跳ね返される。しかし、最後は今度こそ澤田が体ごと押し込みます。大歓声と共にマフラーが振られる。後半の主導権を完全に握った瞬間。

プレスがはまり、水戸の選手がばたつきはじめる。フィールドプレーヤーばかりでなく、GKまでもが…。面白いようにボールを奪ってカウンターに持ち込む。

そして後半32分、ゴール正面。巻がまさに“奪い取った”ファウル。「(養父が)練習でFKを決めていたので、機会を作ろう」(巻)と。それを「周りを気にせず、自分のリズムで」練習どおり決めてみせたのは養父自身でしたが、そのキックの瞬間、蹴られたボールには、1万人の観客の祈りが乗り移っていたに違いない。さすがに勝利の女神もへたな悪戯ができないほどのファンの強い勝利への想いが後押しして、水戸のゴールをみごとに割らせました。「スタジアム中の皆さんとともに勝点3を取ることができた」という冒頭の指揮官の言葉どおりに。1万人のスタンドは総立ちになりました。

終わってみれば、熊本20、水戸7というシュート数が物語るように、とにかく熊本は打った。パスよりもまず自分が打つ。角度がなくても打つ。打つ。これははっきりと伝わってくるくらい徹底していました。攻守の切り替えの早い相手をスカウティングして、奪ってから縦に急ぎ、そして必ずシュートで終わろうという意図もあったのかも知れません。

試合に先立ち、サポーター有志たちの活動によるペットボトル募金が贈呈されると、それに応えるように、池谷社長からは債務超過解消に目途がつきそうだという発言がなされました。株主たちは増資を行い、サポーターは募金を募った。「選手たちもそれに応えてほしい」という県民運動推進本部長の田川さんの”煽り”のような呼びかけに、5連敗からの脱出を今季初めての逆転勝利という劇的な結果で応えました。

試合終了後、この試合、2アシスト(サカくまの記録では)をあげた”影の立役者”の巻選手が、胸を張って選手たちを先導していく。それは、連敗中も顔を上げて、サポーターの激を真正面から受け止めていた姿といっこうに変わらないけれど。
すっかり久しぶりになってしまったカモンロッソ。移籍後初得点はまたお預けになりましたが、今日の勝利の大きさを物語る彼の笑顔が、夏の夜のナイター照明に浮かび上がって…。とても心に残りました。

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