9月14日(日) 2014 J2リーグ戦 第31節
熊本 2 - 2 横浜FC (19:04/うまスタ/8,234人)
得点者:35' アンデルソン(熊本)、51' 仲間隼斗(熊本)、77' 野崎陽介(横浜FC)、84' 松下年宏(横浜FC)


ちょっといつもより遅れてスタジアムに到着したわれわれの耳に飛び込んできたのは、騒然とも言えるようなブーイングの嵐。それは場内アナウンスでアウェーチームのGK・南の名前が紹介された瞬間でした。

4年間、熊本の守護神としてゴールマウスを守り続けた男が、今日始めて相手チームの一員として”うまスタ”のピッチに立っていました。そこに浴びせられる壮大なブーイング。しかし、自身のブログで書いたように、それは彼の”望むところ”でもありました。

キックオフ直前。熊本のゴール前にスタンバイした畑へ送られた「ミ・ノ・ル!」コールも、いつもより増して力強い。「今はミノルがわれわれの守護神」。畑にとっても、今日は特に期するところがあったに違いありません。

前半戦では、齊藤の貴重なゴールで下した横浜FC。しかしその後、ここまで13試合負けなしと好調を維持し、プレーオフ圏内を窺う9位につけている。なかなかの難敵です。

20140914横浜

千葉のケンペス。札幌の都倉。大分のラドンチッチ…。彼らの圧力と闘ってきたように、このチームにも前線にパク・ソンホという191センチの高さがありました。「相手のロングボールというのはわかっていたんですけども」(小野監督)と言うように、前線のパクをターゲットにして組み立てる横浜。対する熊本は、橋本、キム・ビョンヨンという若手コンビが初めてセンターを組むDFライン。完全に2枚でパクを挟み込むスタイルで相手のターゲットを潰しにかかります。

9月もなかばのナイトゲームは気温24.7度。選手もゲーム序盤からパワー全開の思い切った動き。「立ち上がりから相手にプレッシャーをかけ続けてくれて、何度もチャンスを作ってくれました」という小野監督。

ただ、今日のプレッシャーは、好調、横浜をさらに圧倒しようという気持ちというか、気迫というか、いつにも増して激しく、執拗。それはやはり、南の守るゴールを割りたい!という一心ゆえか。そんな選手の気持ちがスタンドにいるわれわれにもシンクロする。

「前半は相手の土俵で同じことをやってしまって…それ以上に相手のプレッシャーが強くて、それは想定していましたけど、もろに受けてしまって。」(横浜FC・松下裕樹)

先制点は熊本。横浜の波状攻撃を凌いでのカウンター。自陣から養父が前の仲間に出すと、見事に前に向き直りすかさず左に流れた齊藤へパス。仲間も飛び込みましたが、齊藤が入れたクロスにニアで合わせたのはアンデルソン。2試合連続のゴールとなりました。

ただ、横浜にもチャンスがなかったわけではなく。しかし、GK畑の片手一本のクリアや、ゴールマウス前の密集のなかでのキープなど、熊本の最後の守りに塞がれる。前に出る積極性も今日は光る畑。試合前のあのコールが気迫を注入して、”今日は当たっている”。そんな感じが伝わりました。

そして早めに欲しいと思っていた追加点は、後半6分。澤田からのスルーパスに仲間が飛び出してシュート。芯を捕らえていなかったのが幸いしたのかも知れませんが、南の脇をすり抜けて、ゴールに突き刺さります。もうスタジアムは歓喜の渦。

2点リードして残り40分。まあ、2点リードすれば、誰が何と言おうと、勝たなければいけないわけですが。これで終わるわけはないのが今の横浜の底力であり、敵将・山口監督の采配でもありました。飯尾、野崎という曲者を入れてくるなかで、「並びというか立ち位置をちょっと変えた」(山口監督)。そんななかで、さすがに熊本の運動量も多少落ち、やはり横浜の攻勢、バイタルへの侵入にチェックが遅れジリジリとラインが下がりはじめます。

対する熊本のベンチワークは、後半14分に仲間に代えて黒木。これは前節と同じく、まだ追加点を取りにいくんだというサインに見えました。しかし、24分に大迫に代えて藏川が入ったところでは、ピッチ上の誰もが「守りきる」ということで頭が一杯だったのではないでしょうか?しかし、それにはまだまだ長い時間が残されていました。

後半32分、CKから野崎に決められ、さらに、39分には、FKを直接松下年宏に突き刺される。いずれも横浜の得意とするセットプレーから。ここまで気を吐いていたGK・畑でしたが、セットプレーへの対応には、まだまだ未熟さを見せてしまいました。

それにしてもアンデルソン。日に日にフィットしてきている。コンディションが上がっているのがはっきりわかります。

「特にディフェンス面で、かなり効果的にプレッシャーをかけてくれて、前線で起点になって、ゴール前でも頑張ってくれました」と小野監督。

そしてこの試合の終盤、連続した2枚目のカードで退場。もちろん引き分けという試合結果も残念ですが、それにもまして…。この退場劇はどうなんでしょう。

熊本としてはホームで追いつかれて、終盤で「絶対に勝ち越してやる」と誰もが思っていた場面。遅延行為をする意味のない場面で、何であのプレーがカード(遅延行為)なのか?アンデルソンにそんな”意図”があったかどうか。

「彼としてはもちろん、オフサイドじゃないと判断してのプレーだったと思います。私も、声を出しても中には聞こえない状況でした。その中で、必死でゴールを奪おうとしていた姿勢、判定は判定として受け入れながらも、私は彼のゴールを目指す姿勢は評価しています」と小野監督はアンデルソンを庇いながら、やんわりとジャッジを批判しました。

そして何より残念なのは、このことでの次節の出場停止。これはもう、頭を抱えて参ってしまうくらい残念で仕方ありません。

それでもアンデルソン退場後も、アディッショナルタイム4分が告げられても、熊本がゴールへ迫る勢いは衰えませんでした。最後の最後の澤田の完全な決定機。完璧なシュートはしかし、名手・南の左手に触れられて、枠の外に追いやられてしまい、万事休しました。

振り返ってみれば、2点も先取したにもかかわらず、追いつかれた残念な試合。しかし、失点は結局セットプレー。それに繋がる”高さ”の課題。熊本の守護神・畑は今日、積極的な飛び出しで絶対絶命のピンチを数多く凌いだ自信とともに、たった一度の痛恨のミスの怖さを、改めて思い知ったのではないでしょうか。

そういう意味では、両チームのGKにスポットが当たった試合ではありました。後半、あれほど南の背中に激しいブーイングを浴びせた熊本のゴール裏は、試合後一転して、熱い「雄太」コールを送りました。それは彼が在籍した4年間のファンとの”蜜月”を感じさせるに余りありました。「これからは互いにライバルとして上を目指そう」。準備されていたメッセージがゴール裏に掲げられました。

南の守る横浜のゴールを、まずは古巣相手のアンデルソンが破り、在籍中ずっとシュート練習に付き合った仲間が破った。南を二度もゴール前で腹ばいにさせたことには、胸がすく思いでした。しかし敵もさるもの、セットプレーからの2得点で追いついた。そして最後は、南が熊本・澤田の決定機を防ぐ。”意地”のぶつかりあいのようなゲームでした。

最後に南が弾いたボールに詰めた岡本がDFに倒された場面は、主審に流されてしまいましたが、PKではなかったのかという意見があります。もしそうなっていたら、またドラマチックだったでしょうね。時間にして完全に最後のプレー。勝ち越し点を阻止するために両手を広げて立ちはだかる南。札幌戦でのPK失敗を背にして立つ岡本。ゴール裏からの怒涛のような声が想像できます。果たしてその結果はどちらに転んだのか…。

残念なゲームほど学ぶべき教訓、取り組むべき課題がてんこ盛りのはず。チームの進化、成長はいよいよ手応えを増してきました。選手たちも皆、最後の最後まで闘っている。

残念ではありましたが、それは、がっかりした、とか、意気消沈などとは違う。あと5分でも時間があれば、あるいはという感覚。次のゲームが待ち遠しい。もっと言えば、好調なチーム、上位チームとやってみたい。この残念な気持ちはそうやって晴らしたい。今はそう思ってしまうくらいの状況ではないでしょうか。

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