9月23日(火) 2014 J2リーグ戦 第33節
岐阜 2 - 3 熊本 (13:04/長良川/7,328人)
得点者:13' 阿部正紀(岐阜)、21' 遠藤純輝(岐阜)、77' 澤田崇(熊本)、86' 巻誠一郎(熊本)、90'+2 園田拓也(熊本)


勝った。勝ちました。大逆転勝利です。

ただ、この驚くべき結果にしばし酔いしれるとしても、これはベストゲームうんぬんとは違う、現時点でチームの今シーズンを集約したようなゲーム。色んな要素がぎっしり詰まっていて、ひとつひとつの噛みしめる価値のある、そんな試合でした。

試合後の会見、記者にもそんな雰囲気が伝わったのか“この勝利の意味は何でしょうか?”との質問が。小野監督は「苦しくなったときにチームが一つになれるか。これはプレシーズンの時から取り組んできた。1失点しては意気消沈した苦い思い出を繰り返した。今日、強い気持ちで戦えたのは、これらの日々の成果だと思っている」と、胸を張って(多分)答えています。

20140923岐阜

さて、データ的には、平均タックル数26で1位の熊本と25で2位の岐阜。同じくファウル数17で1位の熊本と15で3位の岐阜。その数字が示すように、激しい球際のせめぎあい、ぶつかり合いでゲームが始まりました。序盤、熊本が押し込み、チャンスを作りますが決めきれず、岐阜も負けずサイドにスピードのある若手を走らせ押し返します。

「これは私のミスで、遠いラインで何が起こっているかわからず判断が遅れた。それは私のミス。」(小野監督)

前半3分、熊本の左サイドを駆け上がる岐阜・比嘉を、橋本が倒し早々とカードを貰ってしまいます。このFKは凌ぎましたが、同じく前半12分、またも熊本の左サイドで岐阜・森が仕掛けると、今度は仲間が振り切られまいと止めてファウル。そしてこのFKを高地がゴール前の阿部に合わせ先制を許します。

さらに、前半21分、前がかりで岐阜ゴール前に攻め込んだ熊本、奪われたボールは、またも岐阜・比嘉にわたり、熊本の左サイドでカウンター。中央を駆け上がった岐阜・遠藤にわたり、あっさりと追加点を決められてしまいます。

まさに「2失点食らった」(小野監督)という感じの、まったく同じパターンで破られた痛恨の場面でした。

まだ試合は序盤。しかし、この季節にしてはやや暑い26.8度。中二日のコンディションで2点のビハインド。かなり苦しい状況に追い込まれたことは間違いありませんでした。さらに、そんな熊本、前半43分にはアンデルソンが足を痛めて×印が出る。澤田の交代投入を余儀なくされます。うーん厳しい…。

前半のシュート数は岐阜9本に対し熊本はわずか1本。いかにうまくいっていなかったがわかります。前半途中までは、片山や園田は今日はベンチかな?と思うくらい、サイドを封じ込められていました。

ただ、不思議なことに今日も2点差。前節、前々節とは逆の立場ですが、2点リードした側の気持ちがよくわかるだけに、まったく戦意は衰えず、まだまだ戦える。そんなイメージは共有されていたように思います。

小野監督のハーフタイムの指示も「次の1点で大きく状況が変わる。相手を苦しめよう」と。そして「 勝てる試合だ!後半は走るぞ!」と檄を飛ばしました。中二日で苦しい状況のなか、精一杯、選手のモチベーションを掻き立て、“まず1点”という具体的な目標を授けます。

後半も、やられはしないけれど、うまく繋がらず、なかなかシュートまでいかない。思うようにいかない。時間だけが過ぎていく。しかし、そんなストレスが溜まるような時間帯も、選手はひとつひとつのプレーを大事に戦っていたような印象があります。無理して繋がず、きちんと切るプレー。ファウルを取られても、されても、レフェリーの判定に対して実にクールでした。焦らない、めげない。全員の集中した”ポーカーフェイス”が印象に残ります。そう、サッカーは90分を闘うゲームでした。

熊本の戦術はと言えば、まったくブレはなく。剥がされても、いなされてもひたすらプレッシャーに行く。奪えばゴールへの最短プレー。失点後の長い我慢の時間帯を凌いで押し返し始める。一方で岐阜の足が徐々に止まっていくのがわかります。

しかし、今日の澤田。そのキレ方は尋常ではありませんでした。アンデルソンの足は心配ですが、120%の結果論で言えば、この交代が逆転の伏線だったかもしれません。

後半7分、中央の中山からの浮き球のスルーパスに反応して裏に抜け、ゴール前右に走り込んだ斉藤にふわりと浮かせて合わせたシーン。後半11分、中央で浮いたルーズボールをおさめ。単独で相手DF3人に囲まれながら強引に前に持ち込みシュート。さらに、後半17分にはエリア付近右サイドからのスローイン、ゴールマウス右に深く切れ込んで受けたシーン。熊本の押し返しも、ついにスイッチが入った。そんなシーンが続きました。

そして後半32分、岐阜陣内で相手DFが頭でのバックパス。浮き球でコントロールしにくい。狙っていた澤田がこれを逃すはずもなく、一瞬早くスタート。スピードで上回ってかっさらうとGK川口をかわし落ち着いて流し込む。さあ、いけるぞ。反撃の狼煙でした。

直後の後半33分。またも澤田。岐阜陣内の右サイド。スローインからのボールをおさめるとドリブルで中に切れ込む。相手DFを股抜きで交わして中央でフリーの岡本にラストパス。熊本の攻撃はいよいよトップギアに入ります。

これに対して後半35分。岐阜3枚目の交代カードはDF森→FWナザリト。1点差に迫られて残り10分。この場面、追加点を奪い、突き放す。“とにかく弱気になるな”というラモス監督のメッセージでした。

まだまだ1点ビハインド。熊本の攻勢はさらに続きます。後半も残りわずかの41分。相手ゴールキックをおさめた橋本が中央を駆け上がる。降りてきた斉藤に預け、一旦、右サイドの澤田に展開。澤田はフォローにあがってきた園田へ。起点ができる。園田は中を見て、斉藤とクロスしてスペースに受けに出た岡本へ。そのとき澤田は園田の外側をまわりこんで、ゴールライン方向へフリーラン。岡本はマークするDFをかわすと迷わず右サイドのスペースに。DFを振り切って受けた澤田はゴールライン方向、ゴールマウス真横まで深く深く切れ込むドリブル。もう充分なタメ。中央で相手DFの背後からギリギリまでタイミングを計って飛び込んだ巻に、会心の折り返し。体を投げ出してキーパーより一瞬先に触った巻の勝ち。頭ではないが実に巻らしい同点弾!

思わず、テレビの前ですが、家中を走り回ってしまいます(笑)。現場はどうだったのでしょう。これはもう勝ちに行くしかない。スカパー解説の森山泰行氏も「この逆境から勝ちにつなげれば、チーム力が伸びるチャンス」とコメント。

そして、ついに後半アディショナルタイム5分が告げられると、後方、中山からの連続したフィードを前線で巻が競り勝つ。リターンを斉藤がダイビングで競り勝ち、トップ下の位置にいた岡本がおさめる。岡本の前方には相手DF3枚に対し、澤田、巻の2枚が裏をねらう重心で構える。いったんドリブルで前に運ぶ岡本。そのとき、岡本にはどんな視野が開けていたのでしょうか。

中央で構える澤田、いったん右方向へ動き出し相手DFを巻くように、逆にくるっと方向を変えて左へ。自分へのスルーパスを通すスペースを作る動きでしたが、一瞬、右側で余っていた相手DFサントスは澤田に引っ張られたのかバランスが左に傾く。岡本はその澤田の動きでできたエリア右のスペースを見逃さず慎重なグラウンダーのボールを置くように流し込む。そこにトップスピードで走りこんだのはSBの園田。一瞬の迷いもなく、エリアのわずか外側からニアサイドにダイレクトでしっかりとミートした。横っ飛びのGK川口が伸ばした手はわずかに届かずネットに突き刺さりました。ついに逆転。なんということでしょう…。

試合後の敵将・ラモス監督は「2-0は一番危険」「2-0が一番怖い」と、二度にわたって言及しました。しかし、それを嫌というほど味わっているのはこちらも同じ。横浜FC戦で悔しい思いをし、栃木戦でも肝を冷やしました。しかし、この日は、逆の立場で”それを”相手に示しました。

フ~っ。まだまだ興奮は冷めません。こんなゲームですから熊本の好プレーを挙げればきりがないくらいです。何度も何度も繰り返し録画を再生して見てしまいます。しかし。90分を戦うのがゲームなら、42試合を戦うのがリーグ戦。たとえば今日の熊本、前がかりになるのは仕方ないとしても、解説者も指摘したようにいかにも軽いボール扱いから奪われピンチを招くシーンも目立ちました。勝てば、そんなことも忘れてしまいがちですが…。

「勝点3はどんな形であれ3であることに変わりない。でも負けたら0。常に新しい試合に向けて、全力でプレーしないといけない。シーズンを通してあきらめないで最後まで戦えるように、フレッシュな気持ちで臨みたいと思います」。(巻誠一郎)

この言葉でもって、今日のお祭りはいったん記憶のなかに仕舞い込み、次の戦いに備えることにします。

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