11月9日(日) 2014 J2リーグ戦 第40節
熊本 3 - 1 愛媛 (14:03/水前寺/6,924人)
得点者:8' 嶋田慎太郎(熊本)、40' 西田剛(愛媛)、73' アンデルソン(熊本)、90' アンデルソン(熊本)

試合終了の笛が鳴り、ゲームは熊本の勝利で終わった。もちろん、主役の藤本、吉井のまわりに選手たちが集まる。輪ができる。しかし、そのずっと後ろのほうでは、金井、橋本、園田の3人が。“守り切った…”とばかりに、今日の自分たちの仕事をしばし噛みしめるようにガッチリと抱き合っていました。

今年もまたホーム最終戦は特別なゲームでした。長いシーズンのなかの1試合ではあるものの、今日だけは、何としても結果が欲しい。ユニフォームを脱ぐ二人の、これまでの幾シーズンの物語を締めくくる大事な大事なゲーム。

20141109愛媛

午前中まで雨が残る水前寺開催のゲーム。にもかかわらず、およそ7000人が詰めかけました。ゴール裏はギッシリ。ほぼ満席。すでに開始前から最終戦モードがスタジアム全体に溢れていました。

そんなファンの思いと完全にシンクロしたように、序盤から一気に押し込む熊本。「相手3バックの脇を突く攻撃をうまく使えた」と右サイドの片山。左の藏川とともに、次々にえぐっていく。システムのミスマッチが奏功したのか、愛媛のアプローチが不十分なせいもあって、セカンドも完全に支配。

先制は前半8分。ハーフウェイライン付近から園田。相手DF裏のスペースに浮き球の長いパス。飛び出した嶋田がGKより一瞬早くループ。角度のないところから落ち着いて決めて先制。熊本の下部組織出身のJ初ゴール。最終戦の重圧があったかもしれないスタジアムはこれで一気に弾けます。

その後も、サイドから次々に突破していく。精度の高いクロスを雨あられのごとく浴びせかける。シュートも枠を捉える。延々と続く熊本の時間帯。が、しかし…。

これだけの決定機、シュート数。ここで試合を決めておかないと…。と思いはじめた瞬間、わずかに前がかりになった隙を突かれてショートカウンター。前半40分。同点弾を許してしまいます。

以後、ゲームの様相は一変。出足よくセカンドを拾う愛媛。幸いにも前半の残り時間はわずか。我慢の熊本は守り切り、ハーフタイムの修正を急ぎます。

そのハーフタイム、いつもならピッチに出て体を動かしているはずのリザーブの選手たちの姿も見えず。何やらミステリアス。さて指揮官はどんな策を打ってくるつもりなのか…。

修正の答えはアンデルソンでした。故障明け、7試合ぶりの出場。後半開始から中山に代えてピッチに送り出しました。前半のうちに貰ったカードのこともあったのかも知れませんが、決して悪くなかった中山。いやむしろ前半の多くのチャンスは中山が絡む攻撃でした。相当にキレていた中山。しかし(追加点は)決まらなかった。チームとして結果が出なかった。そこで、その軸になるプレーヤーを交代して、攻撃の組み立て自体を一変させる、そんな大胆な意図があったのではないかと。

とは言っても、ここで使う、この一枚のカードは重い。ゲームの結果を左右する局面で温情起用などあるわけないことはわかっているが。しかし、このゲーム展開のなかで勝利という結果と、ベンチにいる2人の交代枠をどうやって両立させるのか…。

試合後、そのあたりを問われた小野監督は、「自分にとって、そういう意味では難しい試合だったかもしれませんけれども、やはり勝ちに行く、それでポジションは自分でつかむ、その原則をもし崩したら、チームというのは違う方向に行ってしまう。」ときっぱりと答えながらも・・・。

「いくつかの準備はしてました。(藤本)主税を中央で使う、トップとして使うこと、それから(吉井)孝輔をセンターバック、あるいはボランチでと、その辺の準備はしておきました。それは、どういう状況になっても、戦力として彼らにピッチに立って欲しかった。彼らが力を与えてチームが勝つ方向に持っていきたかった」とも。

しかし、実際にこの展開。小野監督。悩みに悩んだに違いない。そしてたどり着いた結論。今シーズン一番の渾身の一手と見立てたい。それは“起用が当たった”などというような軽いことばは失礼で使えないような。試合の流れを読み切り、今日の“特別なゲーム”の舞台を大転換させる交代カードでした。

狙い通り、後半、ゲームはまず拮抗。恐らくは守備重視で入っている熊本。前半、飛ばしに飛ばした疲労もないわけがない。愛媛の決定機も…。

そして後半23分。遂に嶋田に代えて藤本。養父が駆け寄ると藤本の腕にキャプテンマークが巻かれる。スタジアムが沸き立つ、というよりもまったく違う雰囲気が出始める。

当初、ホーム最終戦というのに”箱”が水前寺というのは残念だなと思っていました。しかしその思いは一気に吹き飛びました。ピッチに近い水前寺の臨場感。選手を後押しする歓声がすぐ近くにある。渦巻くように。まさにホーム。これこそホーム。

一変したスタジアムのエネルギーがアンデルソンの勝ち越しゴールを呼びます。藤本交代のわずか5分後。後半28分。左サイド、斎藤からのパス。追い越したアンデルソンが角度のないニアから打ち抜く。

さらにその3分後。後半31分には、負傷した高柳に代わり吉井が。さらに盛り上がるスタジアム。確かに二人を出すための交代なのですが、結果はゲームの流れを引き寄せるための完全な戦術的な交代カードに“なった”。ロッソ戦士としての吉井の初ゴールが、この水前寺の地だったことも脳裏をよぎります。胸が、目頭が熱くなります。

「苦しい時間帯に彼らが入って、サポーターがそれに呼応して、絶対この試合をモノにするんだという思いは、ピッチの中だけではなくスタジアム全体に広がってくれた、それが大きな力になったっていうのは、この試合を振り返ってもその通りだと思いますし、それだけのものをやはり彼ら2人がここまで頑張ってきた、それがあったからこその、スタジアム含めての一体感だと思っております。」(小野監督)

「やっぱりサポーターが大切ということ、ホームっていうのはこういうことなんだなっていうのを今日は思った試合ですし、2人が入ることによって雰囲気がガラッと変わったんで。それは2人が持ってる力だと思いますし、熊本の力だと思う…。」(養父)

残り時間は15分。さあ、主役が登場し、舞台は整った。思う存分を見せてくれ!!

試合終了間際の追加点。左から上がってくる片山へ、藤本からのオートマチズムとも言える”らしい”スルーパス。えぐった片山のクロスのクリアを養父が撃つ。GKが堪らず弾くと、そこに詰めていたアンデルソンが押し込んでネットが揺れる。もうアタマのなかは真っ白に…。

計時システムも老朽化した水前寺。残り時間の感覚もつかめぬまま、ある意味あっという間に終了の笛が鳴ってしまいました。

が、まだまだ終わりではありません。勝った!さあ、カモン!ロッソができる。このホーム最終戦で…。

今日の水前寺。ホームゴール裏は満席のためファンは移動ができず、メインスタンドにもバックスタンドでもカモン!ロッソが…。場内一体となってのカモン!ロッソ。これぞホーム。そして、何とアウェイゴール裏でも愛媛サポがカモン!ロッソを踊りだす状況に…。愛媛ゴール裏へ向けて「ありがとう!」の声が飛ぶ。

サッカーに教えられることは多い。

引退セレモニーでマイクの前に立った二人。
「この熊本で引退することを誇りに思う」と言ってくれた吉井。「必ず監督になって帰ってきます。また会いましょう!」と誓った藤本。ファン冥利に尽きる言葉。

嬉しくもあると同時に。もう二人のこの赤いファーストユニフォーム姿は見納めになるのかと思うと…。この季節の常とはいえ、寂しくて哀しくて、仕様がありませんでした。

帰りのファンの人波に任せながら。みんな心地よい高揚感に浸って足取りも軽い。ふと見上げると、スタジアムに隣接するマンションの上層階の窓。赤地に11、22と書かれたフラッグが掲げられています。もう最高…。「最終戦。福岡。行こうね」の会話があちこちから聞こえてきます。あと2試合で今年のこのチームも見納め。もう二度と来ないこのシーズン。この目でしっかりと見届けたいなあと思いました。

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