手元のスクラップ帳を読み返してみました。

「J2ロアッソ熊本の運営会社アスリートクラブ(AC)熊本は23日、参戦資格『クラブライセンス』の来季の交付に必要な債務超過解消を目指し、7千万円を増資する2014年期の事業計画を発表した。」(4月24日付 熊日朝刊) 

クラブ創設10年目のこのシーズン。ピッチ上の戦いとは別の、もうひとつの“負けられない戦い”はこのニュースではじまりました。

2011年決算期で計上した7千万円の赤字。今でこそ当時のクラブ経営の実態がわれわれにも少しわかってきましたが…。

「無理な売り上げ予想や月次報告を怠るなど管理体制の不備」
「組織として体をなしていない時期があった」
「体力以上の資金を強化費に使った。運営体制にも問題があった」
「以前は商品の棚卸しもなく、2年前に辞めた選手のグッズが残っていたこともあった」

J2参入時に掲げられていた「5年でJ1」のスローガンの前には思考停止とも言える空気だったのか。これにずさんな経営体制の問題が重なり、2010~11年に実施した計1億2千万円の増資で解消した債務超過をわずか1シーズンで無にしてしまいました。

この増資に向かう事業計画発表を受けて熊日運動部の山本記者は「サッカーJ2ロアッソ熊本が、“存続の危機”問題に直面している。」(5月9日 熊日朝刊)と表現し、この状況を分析してくれました。

この問題は、われわれのなかでも第一の関心事であり、小心者としてはどんなに快勝したゲームでも、常にどんよりとした重石になっていたような、そんな重大事でした。今のクラブの収益力ではクラブライセンス制度の適用期限までに残された時間を考えると、増資しかない。それは関係者に共通する暗黙の了解事項だったと思います。

募金活動も含めて、この間の経緯は色々と語られていますので、ここで同じような評価うんぬんをするつもりはありません。

しかし、増資しかないとわかっていても、クラブとしては2010~11年に増資をお願いしている経緯があり、出資企業・団体の反発は容易に予想されることで、なかなかその方針を出すことには躊躇があったのでしょう。

結果、「Jリーグから8月までに債務超過を解消するよう指導され、時間がないため増資を決めた。自分たちがやれることは全てやる。同時に県民の皆さんの力も借りたい」「(増資引き受けのメドは)まだない。」「見通しは全く立っていないが、増資を実現する責任感を持って取り組む」(池谷社長)と総会後の会見で述べたように、ある意味で“素早いカウンター”を仕掛けました。事前の根回しもなく(根回しの段階で起こり得る不協和音やそれに対処するエネルギーを回避するために)、発表一発でスタートをきりました。

その後は一気に既存、新規の株主へのアタックに走り「県などから、増資に応じるという回答をもらい、民間企業や個人からも申し込みがあった。入金の手続きはまだ済んでいないが、増資の目標としていた7千万円のめどは立った」(8月2日付熊日朝刊 池谷社長)という(今でこそ言える)速攻ぶりでした。

熊本の株主資本は「県民クラブ」の看板通り、筆頭株主といわれるような大株主はおらず、個人も含めた多数の小口株主で構成されています。主要企業さえ口説き落とせれば方向性が出るというようなものでもなく。出資側も説明責任を負っているわけで単純にはいかない。7月末の期限までにひたすら回り続けるスピード勝負だったことは想像できます。

「AC熊本によると、増資に応じたのは既存の株主39団体・個人の3400万円と、新規の35団体・個人の2700万円。県と熊本市からも各300万円の増資が見込まれるなど最終額は7300万円になる見通しという。」(9月30日付熊日朝刊)

前回の増資からとにかく時間を置くタイミング設定。そしてこれはクラブの「運」ということもあるでしょうが、少しづつ回復しつつあった景況感と消費税増税のマイナスがせめぎ合うギリギリのスケジュール。ピッチ外ではありますが、色んな意味で戦術を尽くした戦いだったのではないかと思います。

クラブの危機を回避した現経営陣の営業センスに拍手と感謝を送りたいと思います。

一方でクラブから協力のお願いが発表された「ロアッソ熊本存続支援募金」活動。その“存続”という文字はセンセーショナルでした。そのネーミングの意図をライター井芹さんが運営する「Kumamoto Football Journal」で池谷社長から引き出しています。(井芹さん、有料なのに勝手に引用してすいません)

「『あまりにもネガティブだ』という意見もありましたよ。」
しかし
「クラブのあり方を変えて体力をつけていくことが大事だと思うんです。そのためにもいい機会だということで、そこは一回、全てを皆さんにお伝えしようと。それは僕の中ではネガティブではなかったんですが、やっぱりJクラブとしての存続がかかっていたので、あえてその表現にした」。(Kumamoto Football Journal

まずサポーターたちがこれに呼応しました。ペットボトルで募金箱を作ると県内隅々まで設置のお願いにまわった。なんとその数457カ所。そして3カ月で集まった金額は249万5214円。また、お小遣いを投げ打ってスタジアムの樽募金をしてくれた子供たち、そのお父さん、お母さん。県外から募金してくれた人たち。企業ぐるみで募金してくれた人たち…。そのほかにも、本当に多くの皆さんに支えられ、現在目標の3000万円に手が届きそうな勢いです。

いや額よりもなによりも、この募金活動は、県内隅々までの人に改めてロアッソの存在を考えさせ、そして絆を作ることにもつながったのではないかと思うのです。消してはいけないチームとして。県民クラブとして、そして“わたしの”クラブとして…。

絶対に負けられない戦いに勝った。

停止条件付きだった鳥取も条件をクリアし、最終的にはJ1、J2、J3の全44クラブにライセンスが付与されることになりました。それぞれのクラブが必死にそれぞれの生き残り策を模索してたどり着いた結果です。厳しくもあり、また、リーグとしては当然の要求でもある制度ですが、同時にわれわれのクラブ、われわれのチームというものを深く、深く考えさせられる機会になりました。

先の山本記者の記事は「市民や行政、企業など県民の意思も問われているのだと思う。どんな結論になるか分からないが、クラブ設立から10年の歩みを県民がどう評価するか、注視していきたい。」と結ばれていました。

10年目のシーズン。クラブはとりあえず大きなハードルをクリアし再スタートをきった節目の年になりました。「5カ年計画~ロアッソ熊本の挑戦~」のビジョンもでき、J1にふさわしいクラブ体力(予算規模拡大)や昇格プレーオフ圏内定着など、今後5年間の目標が明文化されました。

これから5年、10年の次なるクラブの歩み。その時はわれわれも年老い、見届けられるかどうかもわかりませんが。きっとファン、サポーターのまた次の若い世代がクラブと一緒に、道を拓いていくんでしょうね。

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