【J2第24節】(ニッパツ)
横浜FC 0-3(前半0-1)熊本
<得点者>
[熊]岡本賢明(22分)、嶋田慎太郎(54分)、藏川洋平(73分)
<警告>
[横]中島崇典(83分)、市村篤司(90分+1)
[熊]園田拓也(87分)
観衆:7,506人
主審:上村篤史
副審:桜井大介、藤沢達也


「今日の試合は自分にとってはサッカー人生のターニングポイントくらいの意気込みで臨んでいました。このチャンスを生かすか生かさないかで今後が変わってくるというゲームだったと思いました」(ゲキサカ)。

初先発からの今シーズン初得点。この大勝3得点の口火を切った殊勲者・岡本は、この試合に賭けていた並々ならぬ思いを語りました。

「シーズンオフにヒザの手術を受けた」のだという。「リハビリに半年近くかかってしまい、その間チームの状態も良くありませんでした。そのときに自分がチームのためにプレーできないことが、本当にもどかしかった」(ゲキサカ)と心情を吐露しました。チームの選手会長として、いつも明るく振舞っているその心の奥では、計り知れない焦りや不安や苦しみと戦っていたのであろうことが、”ターニングポイント”という言葉に集約されているように思います。

「立ち上がりは、なかなかゲームに入れなかった」(岡本)。コイントスでエンドを替えた横浜が、強風を背にして、縦に早い展開を仕掛けてくる。開始早々、市村のアーリークロスがハンジンの頭を越えると大久保に。これはハンジンがトラップをクリアして事なきを得ます。

大久保の高さ。「それを嫌がってこちらがラインを下げるか、ラインを上げてボールにプレッシャーを掛け続けられるかの勝負だった」と小野監督は言います。熊本は今日も勇気を持って高いラインを保つと、前線からプレスを掛ける。ボールの出所の寺田は齊藤と岡本が自由にさせず、攻撃に転じたら、岡本がボックス内に”神出鬼没”よろしく侵入する。徐々に横浜を追い詰めていく。

それが実ったのが先制点の場面。22分、左サイドのスローインから齊藤が右足を伸ばしてそらすと、ボックス内の岡本に収まる。すかさず岡本が前を向きなおしてDFを置き去りにするとシュート。猛然と前に出てきたGK南にも当たったかと思われましたが、ボールはネットを揺らしました。ガッツポーズの岡本。それに駆け寄る選手たち。

20150718横浜

後半開始から横浜は、なかなかボールを引き出すことの出来なかったカズを諦め、ボランチに渡辺を投入。寺田をトップ下に移すことでマークを外しに掛かります。ただ、確かに寺田がボールを触れるようにはなったものの、チームの随所でミスが出る。FKを得てもダイレクトで狙うものの大きく枠を外すばかり。淡白な攻撃が目立ちます。

熊本はロングボールを齊藤が落とすと、詰めていた藏川がシュート。こればボールごとGK南が枠内に入っていたかと思われましたがノーゴールの判定。しかし続く54分、右サイド奥で岡本がDFにチェックに行くと、嶋田がそのパスをカット。齊藤とのワンツーでボックス内に侵入すると、DFを交わして左足に持ち替えた。瞬間、南の反応より速いタイミングでゴールを打ち抜き、追加点としました。

いまさらですが、前線からのプレスと言っても、熊本の場合、90分間やみくもにプレスを掛けるのではない。ボールの”うばい所”(それは時間であり、場所であり、相手のバランスであり)を狙って、しかもチーム(組織的に)で奪う。単にプレッシャーを掛けるのではなく、”奪い切る”ことなのだと。この得点シーンが特に物語っていました。

“プレス”というサッカー用語だけでは誤解してしまいそうです。今の熊本の戦術の根幹は“奪うこと”。相手の攻撃を遅らせるでもなく、ボールを下げさせるでもない。奪うその一瞬が守備と攻撃を一体にした戦術の起点になる。どうも、奪ったボールが“ものにならない”状況と判断したときには、思い切って(リスクの少ない)スペースに蹴って、相手にポゼッションを渡してでも、奪い直しにリスタートしているような、そんな意図さえ感じます。

たまらず横浜は、小池に代えて黒津を投入。入ったばかりの黒津が、大久保とのワンツーで左から崩すとDFを振り切ってボックス内に侵入。この試合、最大のピンチはしかしダニエルが身体を投げ出し、足でブロックし防ぎます。2-0が一番危ないスコアとサッカーでは言われるとき、絶対絶命のピンチを救ったダニエルのファインプレーが、またチームメイトを奮起させ、勝利を呼び込みます。

怪我で痛んだ渡辺に代えて、松下を入れてくると、中盤での激しい奪い合いの様相になる。熊本は横浜のパスをヘッドでカットしてDFの裏に出す。そのボールを齊藤が持ち上がってシュートしますが、さすがの南がコースに立ちはだかって、ボールは左ポストに嫌われる。跳ね返りのボールを拾った寺田が、前の松下に短いパスを送ったところでした。猛然と走り込んだ藏川がそれを奪うと、南も一歩も動けない速くて強いシュートでゴールにぶち込み3点目とします。

ポストを叩いて悔しがるのは南。前回対戦後は、「今年の熊本はスマート。怖さはあまり感じなかった」とうそぶかれましたが、この日は3度そのゴールマウスを打ち抜いた。南がボールを持つたび大きなブーイングを送り続けたゴール裏の赤いサポーターたちも、きっと溜飲を下げたに違いない。それにしてもアウェーの地・三ツ沢に多くのサポーターが駆けつけ、よくぞあれほど赤く染めてくれました。

その後も熊本はラインを下げることなくプレスも怠らない。巻を入れ清武を入れ、走り続ける。横浜は完全に戦意を喪失、後ろで回すしかない。アディッショナルタイム3分、右サイド奥から途中投入の中山からのクロスに巻の頭が触ったか触らなかったか。ボールはゴールの左隅に吸い込まれ、4点目かと思わせましたが、これはオフサイドの判定。そして終了の笛が吹かれると、この日も熊本はクリーンシート。シーズン初めての連勝を敵地でもぎ取りました。

「点差よりは苦しい試合だった。選手が最後まで走り切ってボールに果敢にプレッシャーを掛け続けてくれたことが勝点3につながった」。そういう指揮官の試合後の言葉が、この試合の全てを物語っているでしょう。やはり”走ってなんぼ”。そして、玉際で激しくいくチームスタイルが、横浜をして、「自分たちから相手にプレゼントしたようなプレーが多かった。信じられないミスが多かった」と、ミロシュ監督を嘆かせました。

初連勝を飾り、順位こそひとつ上がって16位にしたものの、この節、下位グループも勝ち点を積み上げたことによって、その差はあまり広がりませんでした。まだまだ浮かれるわけにはいかない。

試合終了後のピッチ。途中退いた岡本が、選手たちを労い、一人ひとりと笑顔で握手を交わす。「まだまだ自分たちは苦しい順位にいる」(スカパー!ヒーローインタビュー)と言う彼の自覚の言葉もそうですが、何よりまた一枚、前線のカードが完全に戻ってきたことは頼もしい限りですね。

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