2015.08.02 連勝。栃木戦
【J2第27節】(うまスタ)
熊本 2-0(前半0-0)栃木
<得点者>
[熊]クォン・ハンジン(73分)、嶋田慎太郎(88分)
<退場>
[栃]桜井繁(85分)
<警告>
[栃]廣瀬浩二(59分)
観衆:5,116人
主審:荒木友輔
副審:藤井陽一、佐藤裕一


「ゲームコントロールもできていたし、勝てる試合だった。大きなミスから流れを失ったのが痛かった」とは、試合後の栃木・倉田監督のコメント(2日付・熊日)。われわれですら「たら・れば」を良しとしないのに、これはどうしても「ミスさえなかったら」としか聞こえない(笑)。サッカーのあらゆる失点は、必ずその前にミスがあってのことなのですが。

というよりも、早めに強気で交代カードを切っていき、残り20分近くもあったにも係わらず、最後の切り札・中美を投入し勝負に出た。けれどこれが裏目に出て、あのキーパー退場のシーンで交代要員がいなかった。そんなベンチワークを問われまいとする心理が働いているように感じるのは、深読み過ぎるでしょうか。

われわれの目には、今日のゲームの流れにしては栃木の交代カードの切り方が早い。逆に、ここ数試合のペースから較べるとじれったいほど熊本のカードが遅く感じる。それはスタンドで観戦していて感じていたことですが、帰って録画を見直し、紙媒体も含めた色々なコメントを合わせ読むと、両監督のこの試合に向けたスカウティングとゲームプラン、その裏側の心理、ベンチワークの妙と合間って、こんな面白い試合はなかったように思えてきました。まあ、これも勝ったからこそ言えることでなんでしょうが(笑)。

20150801栃木

対する小野監督が「点差ほど優位に進めたわけではなく、かなり苦しい試合でした」(九州J-PARK)と言うのは、誰しも見てのとおりの感想でしょう。熊本は、試合の入り方こそ悪くはなかったものの、栃木の球際の強さや、出足の早さでボールを失い、短いパス回しで崩されると、幾度となくゴールを脅かされる。頼みの齊藤は、栃木の坂田、ハン・ヒフンの高さのあるCBに自由にさせてもらえません。

ただ、ここを耐え切れる守備の意識が、あるいは戦局観が今の熊本にはある。倉田監督は、最後のシュートの精度を悔やみますが、ゴールマウスに大きく立ちはだかり、コースを切っているダニエルの存在は大きかった。まさにペナルティエリア全域を睥睨し支配している。最後の最後のところで、ハンジンや鈴木の足もよく出ています。

そうやって耐えていれば、後半必ずチャンスはある。指揮官はそう見ていました。「栃木は監督が代わって、かなりアグレッシブなサッカーに持ってきてます。」「その分、今は後半になると少し息切れするところが、ここまでの試合で見えました」(小野監督)。確かにこの日のうまスタも、日が暮れたとはいえ、うだるような暑さが残っていましたが、前半も終わりごろから栃木の選手たちのユニフォームが、汗でぐっしょり濡れ始めているのが、スカパーの画面ごしに見て取れました。

後半開始早々から栃木は、前半目立っていた湯澤に代えて松村を入れてきます。さらに63分には、面倒くさい相手だった河本まで引っ込めてくれる。これが確かにあとから考えると、「とにかくスタートから飛ばしてくる」(小野監督)チームの戦術なのでしょう。ガソリンが切れた選手を入れ替えて、チームのパワーを維持する道を早めに選びます。

そんな攻防のなかで小野監督は、前半途中から清武と嶋田のポジションをチェンジさせた以外は、どっかりとベンチに腰を据えて一向に動こうとしません。いつもだったら、巻を入れて押し上げを図ってもよさそうなのに。いやいや、攻撃の形も作れているので、このバランスを崩したくないのだろうか…。などとスタンドで勝手な思いを巡らせていました。

ようやく指揮官が動いたのは71分。清武に代わって入ったのは田中。このスピードスターの登場にスタジアムが沸き上がります。間髪を入れず栃木は最後のカード、中美を投入。前半戦で2点を決められて同点引き分けに持ち込まれた相手。この選手に栃木は勝負を賭けたというところでしょう。

熊本がロングボールで栃木のDFラインを押し込もうとしていました。栃木DFの坂田のヘディングの処理が悪く自陣ゴールラインを割る。熊本の右CKに、SBからキッカーの養父が駆け上がるとき、養父はコーナーのボールボーイではなく、途中ピッチサイドのボールボーイにボールを要求して自ら抱え、そして急いでセットします。栃木の選手たちとしては、なんとはない小さなミスからのCK。そして、ちょっと水分補給でもしようかという緩慢な気持ちもあったかも知れない。そんな一瞬の素早いリスタートでした。

セットするなり蹴られた養父のキックを、ニアで齊藤が叩きつけるように頭で反らすと、中央に入ってきたハンジンが左足で押し込む。ボールも人も、あまりの速さに栃木の選手は対応できません。前半戦の栃木戦で決めたのと同じようなハンジンの得点で、熊本が先制に成功します。

残り15分。さすがに熊本も疲れが見えてきました。俄然、栃木も反撃に転じ、再び熊本ゴールを脅かす。ゴール前の混戦のなかでハンジンが倒れこむ。おいおい大丈夫か。メディカルスタッフもピッチ内に呼ばれ、ハンジンはピッチの外へ。すぐに大谷が準備される。

あとでスカパーで知ったことですが、これは選手とスタッフとベンチの情報連携のミスだったようですね。ハンジンは恐らく少し時間稼ぎをして、この流れの悪さを断ち切りたかったのでしょう。「まだ出来たのに」とでも言いそうに苦笑いして、ハンジンがベンチに退く。ベンチでは監督もコーチ陣も苦虫でも噛み潰したような表情。この大事な時間帯と、この展開のなかで、いただけないベンチワークの凡ミスでした。

動揺も走りそうなそんな展開を、きっちりと締めたのは、ここでもGKのダニエルでした。栃木の右からのCKをジャンプ一番パンチングで凌ぐと、続いても阪野からのパスを受けた松村のシュートをがっちりとセーブ。栃木に流れを渡さない。

すると85分、栃木の攻勢のなかでのパスミスを齊藤が逃さずダイレクトで広く開いた栃木陣内へ出すと、そこに走り込んだのは田中。相手GK桜井が一瞬、躊躇したぶん、田中のボールに。ドリブルで突っ込もうとした瞬間、桜井は田中を引っ掛けて一発レッド。

冒頭書いたように、栃木にはもう残された交代カードはありませんでした。一旦ハン・ヒフンがグローブを着けるものの、コーチ陣の指示で荒堀がキーパーユニに着替えます。

このFKのチャンスに立った嶋田。前半、同じようなFKをバーに当ててしまったイメージが残っていないはずはありません。ただ今度は左からではなくゴールに向かって右側から。嶋田の得意とする左足から放たれたボールは、綺麗に弧を描いてゴール左隅に突き刺さる。荒堀も手を伸ばしましたが、急造GKとしては苦笑いするしかないコースでした。

このレッドカードからFKに至る流れ。いつも思うのですが、エリア外であっても、このプレーは得点機会阻止のための確信犯。桜井も一発退場に代えて、失点阻止に賭けたのだと。それからすれば一種の認定PKみたいなルールがあるべきではないかと思うのです。逆にこのFKを決めるのはたとえフィールドプレーヤーがGKだとしても至難の技。そのFKを“入れ返した”嶋田の今日のプレーは理屈では測れない価値を持っていると思います。

このシーンの前に、嶋田に代えて巻が準備されていました。「相手が1人少なくなるというのはある意味、メンタル面での危険が出るんで、そこに弛みがないように、入って声をかけてくれ」という指揮官の意図。しかし、FKのキッカーは誰だと藏川に尋ねてそれが嶋田だと知ると、「タイミングを1つずらし」た。「ここは1回託そうと」。その嶋田がきっちりと”仕事”を成し遂げると、残された時間、巻きも託された役割を全うしてアディッショナルタイム5分を凌ぐと、熊本がクリーンシートで連勝を飾りました。

順位は暫定ながら14位まで上がりました。指揮官も「ようやく目指すところ(プレイオフ圏内)が見えてきた」と口にしました。しかし、下位グループは相変わらずの団子状態。

このゲーム、大きなプランを描いたのは小野監督だったのですが、それをピッチ上で微調整、微修正したのは選手たち自身だった。そんな今日の試合の実感が、指揮官を自信めいた口調にさせたに違いないでしょう。

冒頭、書いたようにこのゲームの行方を左右した選手交代のベンチワーク。まさに勝った後の結果論ですが、お互いに決めるべきチャンスを生かせない展開のなかで、小野監督が描いたのは、「悪くはないが思うようにいかない」「こんなゲームはじっくり構える」そんな判断ではなかったかと。逆に敵将には、「決めきれない」焦りからくる、「何らかの手を打たなければならない」と思うような思考回路ではなかったかと。そこまで言っていいのかどうかわかりませんが、その底には選手に対する信頼や自信のようなところがあるのではないかと。

ようやく梅雨明けした熊本はこれからが夏本番。いつもこの時期失速していた熊本のもうひとつの敵”夏の暑さ”を、今日のように”味方”にすることができるのか。まだまだ確信の持てない心配性のわれわれですが、今夜ばかりは(先週もでしたが(笑))勝利の美酒に酔いしれたいと思います。

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