熊本 1-0 福岡大 [水前寺]
[熊]田中達也(77分)


いいものを観せてもらったなぁ…。素直にそんな感想を持ちました。

福岡県代表の福岡大学との天皇杯1回戦は、どしゃぶりの水前寺競技場で午後4時キックオフ。ロアッソのスタメンは、やはり大きくメンバーを入れ替えてきました。GKは畑、CBの一角に大谷、左SBは上原、ボランチの上村と組むのはなんと21日にトップチームに登録されたばかりのユース選手、まだ高校2年生の米原。左SHにルーキーの坂元。前線は前節出場停止で休んだ齊藤に、清武の2トップ。清武は母校との対戦で、いいところを見せたい。

なんと平均すれば21.9歳と。ひょっとすると福岡大学と変わらないくらいの若い赤馬たち。まあ多少の先発の入れ替えは予想していましたが、ここまでとは。経験を積ませるためとはいえ、指揮官も思い切ったことをする。しかし、これは一方で興味深い。

20150829福岡大

対する福岡大学は、中盤が一枚降りてきたようなほとんど5-2-3の布陣。中もサイドも使わせないようにということでしょうが、しかし決して引いて守るわけではない。鳥栖の特別指定選手にも選ばれているGK・永石の守備範囲がやはり広く、DFラインを高く保てて陣形はコンパクトそのもの。裏を狙うロアッソの戦術を読みきって、次々にオフサイドに仕留めると、乾監督もしたり顔の様子。1対1の能力も高く、大雨のなかスリッピーな足元を気にするロアッソの選手たちは、なかなか球際も取り切れません。

しかし20分頃、スルーパスに飛び出した坂元が、GKの頭を越えるループ。これはクリアされるも、再び拾って中に入れる。しかしGKがキープ。

続いては米原から嶋田へパスが通る。嶋田が切り替えしてシュートもGK正面。惜しい。

前半終了間際に福岡大学は、右サイドからのスローインを繋いでニアでシュート。これは畑がクリア。続くCKはファーサイドからフリーでヘディングされますが、バーに当たり枠を越えてくれる。全体的にはロアッソがポゼッションを握り、福岡大学がカウンターを狙うという展開で前半を終えました。

「オフサイドになった場面は多々あったんですが、決してそれはネガティブなことではないと、ハーフタイムでも思っていたので、しっかり続けると」(九州J-PARK)指揮官は指示しました。それに応えるように、若いとはいえロアッソの選手たちも変に焦ることなく、執拗に裏を狙いに行きます。

後半開始早々、上原のフィードに抜け出した齊藤が絶好の位置からシュートを放つも、これは”宇宙開発”。右サイド奥に展開した上村からのクロスには、ファーサイドの坂元が惜しくも追いつけず。

危なかったのは13分頃、福岡大学の右からのクロスにダイビングヘッド。これはポストに跳ね返されて事なきを得る。われわれの周りには、保護者なのか多くの福岡大学の応援団がいたのですが、大いに沸いたシーンでした。

ロアッソは坂元に代えて巻を投入。清武を2列目に下げて齊藤と巻の2トップに。対する福岡大学は、最終ラインで高さで劣った丸尾が狙われていたのを嫌ったのでしょうか、丸尾を下げて三浦を入れてくる。

それにしても17歳の米原。なにも物怖じすることなくチームを牽引する。ボランチとしての危機管理能力が光るだけでなく、再三のスルーパス。そんな裏への球出しに対して、よく喰らいついて対応しているのは福岡大学。

このままスコアレスだと延長戦。そんな天皇杯のレギュレーションを思い出し、時計を気にし始めていたころでした。疲れた清武に代わって入ったのは田中。これは高い福岡大学のDFラインに走りこめば面白いだろうと・・・。

そんな32分。右サイドにいた嶋田から齊藤がワンタッチで出すと、黒木がオフサイドをかいくぐって右サイドを突破。Pエリアに入るとGKと1対1だったのですが、直前で左にはたく。グラウンダーのクロスを、駆け上がってきた田中がファーサイドでしっかりと押し込んで先制点とします。

乾監督にとどまらず、きっと福大の選手たちも、昨年まで九州産業大のスピードスターだった田中達也のことは警戒していたに違いないでしょう。ラストパスを送った黒木のことはもう現役の生徒はもしかしたら知らなかったにしても、佐賀大から九産大へのホットラインで福大を崩す。九州大学リーグファンとしては、垂涎ものの得点シーンでした。

ロアッソは、この虎の子の1点を守って勝利。最後は米原から園田にスウィッチ。ベンチに下がる米原に、スタンドから大きな拍手が送られました。

冒頭に書いたとおり、この試合、正直”ここまで”選手を入れ替えてくるとは思っていませんでした。小野監督は試合後のインタビューで天皇杯、その対戦相手が大学生だったことに関してこう言いました。
「否応なくモチベーションが上がってくる(相手)チームに対して、受けて立つのは、自分たちでしっかりとメンタル面のスイッチを入れてマックスの状態にしなければいけない。そこに非常に難しさがある」(九州J-PARK)と。

なるほど、それに対して指揮官は、大学生と同等の年代の選手、公式戦に絡むか絡まないかという線上の選手たちを並べ、そのメンタルのスイッチを入れた。受けて立つのではなく、”チャレンジ”させた。そう言えるかも知れません。相手の年はさほど変わらない。しかし、自分たちはプロであるというプライドも。

新しい(若い)戦力。その可能性を見るのは、プレシーズンマッチのときのワクワク感に近いものがありました。しかし、これは天皇杯という公式戦であり、そしてそのなかで、勝利という結果ももぎ取りました。

試合前に送られたエールにタイミングがなかった熊本のゴール裏から先に、試合後「福岡大学!」のエールが送られました。それに応えて福岡大学から「ロアッソ熊本!」のコール。福大の選手たちも、ホーム側のメインスタンドに並び一礼して、スタンドからは万来の拍手。すがすがしい。これも天皇杯。

雨のなか90分間飛び続けたゴール裏には、ご褒美のような「カモン!ロッソ」。日ごろユニフォームで参加していなかった選手たちも、この日ばかりは胸を張って飛び跳ねただろう・・・。自分たちが戦ったのだと。

いいもの(試合)を観た。冒頭に書いたのはそんな色々な意味があったわけで。ロアッソがJ参入以来、ファンとしてのモチベーションに首を傾げていた「天皇杯」でしたが、今日のこの試合ばかりは、その意義を感じた天皇杯となりました。

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