【J2第40節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半0-0)水戸
<得点者>
[熊]嶋田慎太郎(59分)
[水]船谷圭祐(63分)
<警告>
[熊]岡本賢明(30分)、清武功暉(83分)、巻誠一郎(90分)
[水]岩尾憲(75分)
観衆:8,781人
主審:吉田哲朗
副審:村井良輔、熊谷幸剛


いつものエントリーとは別に、われわれとしてもやはりこの事件に触れておかねばなりませんね。

この水戸戦の前日、7日付の熊日朝刊で突然報じられた小野監督およびクラブへのJリーグからの厳重注意処分。最初、記事を読む限りでは、小見出しに取った「嫌がらせ」という言葉からなんだかよくイメージがつかめず、パワハラ的な印象を持っていたのですが、その後のNHKなどの追っかけ、あるいはクラブ公式から発せられた報告などで、おぼろげながらこの実態が、小野監督によるスタッフへの”暴力行為”だということが理解できました。

「監督は常日頃から先頭に立って、試合はもとより、練習の際も選手の怪我、練習環境に大変気遣いをしており、今回もそういう思いが行動に表れた結果ひきおこされました」とクラブ公式は言います。確かに監督のその姿勢、それはわれわれにも伝わっています。公式の言葉をさらに借りれば、「8月26日県民運動公園補助競技場において、数名の選手とのミーティング後、合流した段階で、チームの紅白戦の前のピッチが整備されていないことに対し、チームスタッフの怠慢であるとし、スタッフの一人に行き過ぎた注意をした」と。その”行き過ぎた注意”という行為をクラブは具体的に書いていませんが、熊日によれば「顔を水たまりに近づけさせ、背中を踏み付けるなどした」のだと…。

思い起こせば、この26日は熊本がとんでもない強風に揺るがされて巨木などもなぎ倒された、あの台風15号が通過した翌日になります。恐ろしいほどの暴風雨がまだ記憶に鮮明です。トレーニング環境の整備。それに対してのスタッフの動き。当事者でもなく現場を覗いたわけでもないわれわれが、それ以上の情報や感想を持ちえているわけではありません。その状況下でもスケジュール通り紅白戦が組まれたということ自体、われわれとは異次元の緊張感、価値観を感じます。常にプロフェッショナルの仕事を求める勝負師の姿勢。われわれがこの経緯にコメントする資格はありません。

ただしかしひとつだけ言えることは、仮に事情を勘案したとしても、いえどんな事情があったにせよ、”暴力”だけは絶対に否定されるべきであるということ。この一点に関してはどんな真実にも優るといえます。

クラブからは、「今後、より一層コンプライアンス順守に努め、180万県民に愛され、信頼されるクラブとなるよう精進する所存です」と表明されました。幸いなことに、その後のチーム成績に関しても、一丸となった結果を見せてくれています。

今日の水戸戦。スタジアムのコンコースで逢った旧知のクラブスタッフに、「こんなときこそクラブの真価が問われます」と言われました。われわれが果たすべきことは、事の真実を見極め、クラブに対して正すべきところは正し、そのうえで、支え続けることだと思います。それがホームチームへの愛なのではないかと。

20151108水戸

さて長くなりました。試合はというと。

対戦する水戸は19位に沈む。この試合で勝てば降格圏内を脱し、残留が決まるという状況。ここ終盤においては、対戦する相手ごとに、それぞれ違ったモチベーションがあって向かってくる。それに対して指揮官は、「気迫で上回ること」(スカパー)を命じて、選手たちをピッチに送り出しました。

そんな水戸のモチベーションに押されたのかも知れない。あるいは今節敷いたダイヤモンドの中盤がどうだったのか。水戸が熊本のお株を奪うようなプレスでボールを奪うと、逆サイドへピッチを広く使った攻撃で熊本を脅かす。馬場と鈴木で左サイドを崩していく。受け身な熊本。

そんな中で12分頃。スローインからの流れ。齊藤が落として清武のシュートがPA内に残っていたハンジンの足元にこぼれた。シュートも、これは右サイドネット。

30分には清武が高い位置で奪って平繁にパス。平繁が左からグラウンダーでクロスを入れると、フリーで入ってきた齊藤のシュートはポストに当たって撥ね返されて絶好機を失う。(ただ、完全に崩したと思われましたが、あとでビデオで見返すと、齊藤の入りが遅れていた。丁度野球の振り遅れのファールチップのように、齊藤の振った足が遅れて外れて行っているのがわかります)。

なんとはなく“受けてしまった”前半を終えて。後半開始早々から熊本は岡本に代えて嶋田を入れました。こんなオープンに近い展開にこそふさわしいのは嶋田だったのかも知れない。そしてこれが奏功する。

59分。清武のロングスロー。低い弾道。ライナーで。ゴール近くニアで競った園田。こぼれる。それを嶋田が利き足とは逆の右足を振りぬいて、ゴールに押し込みました。

ここ数試合、精彩を欠いていたといえる嶋田。失点にも絡んだプレーを見ていて、われわれも書こうか書くまいかと悩んでいました。指揮官は言います。

「若い選手には常にありますが、ある程度試合に出続けていくと、途中でなかなか良くなっていかないことがあります。彼に限らず、多くの選手でそうでした。彼 が素晴らしいのは、そこでもう1回、昨年どうやってチャンスをモノにしていったかを見つめていました。終わってからもしっかり1vs1のトレーニングを し、ディフェンスを磨き、そこから攻撃の良さをもう1度つかんでいきました。立ち返るところを自分なりに見つめ、ひとつ壁を這い上がってきました。これは 本物になりつつあるなと感じました。そういうものが凝縮されたゴールだったんじゃないかと思います。 」(公式サイト)

タオルマフラーを全開にし、振り回して喜んだ8千人のスタジアムだったのですが、喜びも束の間でした。63分、水戸がPアークで粘る。熊本はブロックするも鈴木が出したパスに、途中から入った船谷がこれも利き足でない右足を振りぬいた。GKダニエルも横っ飛びで触りましたが残念。ボールはゴール左隅に吸い込まれてしまいます。

その同点弾の前、熊本は藏川を準備して、この1点を守ろうとしていました。同点に追いつかれた段階での交代は、アンデルソン。平繁が足を攣っていたせいもありました。

開幕前に右ヒザ前十字靱帯断裂という大怪我で戦列を離れたアンデルソン。その離脱は今シーズンのチーム戦略を狂わせてしまった最大の損失でした。

そのアンデルソンが、この大事な時期に、残り3試合となった時期に”間に合った”。帰ってきた。場内からは最大の拍手。

「コスタリカで手術」。そして長い長い辛抱強いリハビリの日々。「 こんなに長く試合から離れていたのは初めてで難しかったが、クラブ、サポーター、家族の支えがあって復帰できたので感謝したい」と言った。そして「(途中出場する時のサポーターの声援は)すごく嬉しかった。サポーターが自分のことを忘れていなかったことと、その声援で頑張ろうという気持ちになった」と…。

忘れるわけがないじゃないかアンデルソン。深刻な怪我からの復帰を思わせないそのプレー精度。前線で収める、前を向く。切り替える。サイドに開いてチャンスメイクする…。先々週、全体練習に復帰したばかりとは思えない躍動感。

ただ水戸もしぶとかった。鈴木雄斗に代えてアンダー代表の鈴木武蔵を入れてくると、81分には田中のミドルシュートがバーに直撃。アディッショナルタイムにも左からのクロスが抜けるが、前線の武蔵にも合わず。これは事なきを得ました。

終了のホイッスルが鳴ってピッチに倒れこんだ両チームの選手たち。手にした勝ち点1、こぼれ落ちた2点の重さを体全体で受け止めているかのようでした。

熊本は勝ち点1を上積みし52点とし、6位、7位、8位が57点にとどまり、のこり2試合。その差は5点。PO内への可能性は数字上ゼロではないものの、かなり厳しい状況になったことは間違いありません。順位は12位まで落としました。

試合後、公然と涙を見せていた清武。「今日は絶対勝たなければいけない試合だったし、僕にもチャンスがあったので悔しい」とコメントしました。「ロアッソ熊本にきて、結果を残さなければいけなかったので悔しい」と。それが涙を流させた理由だった。「自分が熊本にきた時は低迷していて、ダンや自分は結果を残してプレーオフまで上げるという強い気持ちなので、残り2試合、頑張りたい」。そんな気持ちで、熊本のために”悔し涙”を流してくれる”助っ人選手”がいる。

そしてわれわれはどうでしょう。その可能性は現実的にはあり得ないくらい厳しいものなのかも知れない。ただ、この最終盤。消化試合のようなものでは決してなく、こんなモチベーションで次の試合も臨んでいける。負けは許されないぞと臨んでいける。最後の結果はどうあれ、われわれ熊本の経験値に間違いなく上積みされる。これを楽しまないでどうする。そんな気持ちの、残り2ゲームです。

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