【J2第4節】(本城)
北九州 1-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[北]小手川宏基(57分)
[熊]清武功暉(89分)
<警告>
[熊]岡本賢明(47分)
観衆:3,951人
主審:山岡良介
副審:塚越由貴、櫻井大輔


「苦しい中で迎える好相性の熊本戦」「過去5年間、黒丸を付けたことのない相手」。戦前、九州J-PARKのプレビューで、北九州側の記者に随分と煽られました。北九州としては山口、岐阜に連敗。怪我人も多い状況のなか、ジンクスにすがってでも連敗から抜け出したいと願っていたでしょう。

確かに対戦成績は分が悪い。特に敵地・本城陸上競技場ではろくな記憶がない。しかし、清川監督は、対戦相手やこれまでの戦歴のことより、この3連勝を受けて「何となく守りきれるとか、点が入るだろうという思いがあるとダメ。自分たちのやり方をしっか進め、ベースとなる部分を90分やり通さないといけない」(九州J-PARK)と、周囲の雑音よりチーム自身を見つめていました。

20160320北九州

早春のこの季節、選手たちは変わりやすい天候とも戦う。この日襲ったのは強い風でした。コイントスで風下を選んだ北九州のGK阿部の蹴るキックが、ハーフウェイラインを越えない。対して熊本も風上の戦いが上手かということはなく。相手DFの裏のスペースに出すロングボールが、風に煽られて抜けてしまう。

ただゲームの入りは悪くありませんでした。6分、嶋田からパスを受けた岡本がエリア左外から強引にシュート。これがエリア内にいた平繁に当たってコースが変わると、あわやゴールと思わせますが右にそれます。続く8分には高い位置で高柳が奪うと、中央の清武に。清武はDFを引きつけ更に左の平繁へ。平繁のコントロールしたシュートでしたが、これも右にそれる。惜しい。

北九州も徐々にペースを取り戻し、互いに攻守の切り替えの早い展開に。32分には北九州・花井から井上が繋いで、元日本代表・本山がエリアをえぐるとマイナスパスに風間のミドルシュート。間一髪でGK佐藤がクリアします。

ここから北九州のCKが何度も続き、波状攻撃に晒されますが、なんとか熊本も凌ぎきって前半を終えます。

「風上になるのでシュートの意識を高めよう!」。ハーフタイムでの柱谷監督の檄に応えるように、俄然、北九州が攻勢に出てきます。ゴール前が脅かされ、CKが続く。我慢の時間帯でした。

均衡が破れたのは57分、右サイドで藏川が井上に奪われると、本山、井上と繋いで、北九州の右サイドを上がってきた小手川へ。フリーで撃たれたシュートが、ゴールネットに突き刺さりました。熊本は今季初失点。

カウンターというほどの攻撃ではありませんでした。守備の人数も足りていたし、体力が消耗する時間帯でもなかったが、1歩2歩が遅れていました。「どうしても何とかなるだろうというのが少し選手の中であったと思います」と、戦前の心配と同じようなことを言って、指揮官はこのシーンを振り返ります。

しかし、指揮官も多くの選手も言うように、この失点で逆に熊本は目が覚めた。それまでお株を奪われたように北九州に球際激しくやられていましたが、ようやく熊本も「ボールに対する厳しさが出てきました」(清川監督)。

そしてここからのベンチワークが、試合の展開を変えます。

熊本が岡本に代えて巻を投入すると、北九州も本山に代えて大島。両者前線に高さを加えてきた。展開が徐々にオープンになってくると、熊本は齋藤を加える。これに対して、北九州・柱谷監督は、MF加藤をアンカーの位置に入れて、大島のワントップに。残り20分を逃げ切るサインでした。

熊本は早め早めに前線にボールを入れる。85分、右サイド奥のスペースに出すと齋藤が猛ダッシュ。北九州DFがなんとか追いついて、折り返しをクリアするものの、「こいつは速い」という残像が焼きついたのでしょう。

それが奏功したのが89分、ハーフウェイライン辺りからの高柳のロングフィード。PA内の巻が頭で落とすと、齋藤が拾ってエリアをえぐる。慌てた北九州DFが引き付けられたところを、齋藤がうまくマイナスパスを送ると、中央で待っていた清武が、しっかりとゴールに押し込みました。同点!

巻が落として、スピードのある齋藤が裏を取る。わかり切った構図でしたが、それをさせてしまった北九州は、連敗こそ脱したものの、あとわずかで手にするはずだった勝ち点の2をこぼししたショックを隠せませんでした。先の北九州側の記者は試合後のレポートで、「前向きに受け取っていいわけではない」と、早々と守備固めに走ったベンチワークを批判しました。

一方で、清武は殊勲のバースデーゴールで追いついたことより、「最後のチャンスで決めきれないのは課題」と、その後にもあった逆転の絶好機を逸したことを悔しがる。

今シーズン、初めて先制を許し、その後どう巻き返せるのか、真価が問われた試合でした。時間が過ぎていくなかで、やはりこの本城は鬼門なのかと思わせましたし、これまでだったらそのまま追いつけず、逆に追加点を奪われて…敗戦というパターンを何度も見てきた。

しかし、「先制されたあとも、中では『返せる』という落ち着きと自信があって」と清武が言うように、粘り強く、粘り強く全員が辛抱して、綱引きを手繰り寄せるように、好機をこちら側に持ってきたような印象です。

セレッソの連勝が続き、熊本は讃岐に総得点で抜かれて3位に“後退”ということになりました。が、しかし。この難敵、北九州とのゲーム。先制されて負けなかったこと。最後の最後に追いついたことは、チームの大きな自信に繋がったに違いありません。試合後の選手たちの表情にも明るさがありました。これまで対戦した6シーズンとは違う。同じ轍は踏まないんだ…と。
勝ち点1ではあるにしても、シーズン序盤にしてこの試合の勝ち点1の意味は大きい。ちなみに、2010年7月18日、第18節でJ2初対戦したのもこの本城。このときは相手のロスタイム同点弾を浴びて2-2のドローに持ち込まれてしまったという、今でも忘れられないゲームでした。

あれから6年目の今日、ドローに持ち込んだのは熊本でした。


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