【J2第14節】(柏)
熊本 0-1(前半0-0)水戸
<得点者>
[水]三島康平(81分)
<警告>
[水]田向泰輝(68分)、細川淳矢(89分)
観衆:8,201人
主審:柿沼亨
副審:亀川哲弘、藤沢達也


それは遠い関東にありながら、まぎれもないホームスタジアムでした。

黄色いマフラーを巻いているにしても、家にある一番赤い服を身にまとってきてくれた。募金の代わりに配られた赤いポンチョの下には、青や紫のレプユニが見えた。あるいは赤黒のユニフォームで以前在籍した選手の応援に駆けつけてくれた人の姿も・・・。この特別な場所に居合わせられないわれわれも、代わって東京にいる息子に参戦を頼みました。

そうやって彩られた柏・日立台の熊本ゴール裏は、まさに真っ赤に染まり、この試合が熊本のホームゲームであることを実感させました。

水前寺清子さんが試合前の「HIKARI」の列に加わり、スピードワゴンの小沢一敬さんが若手を引き連れて応援に駆けつけ、高橋陽一さん、ツジモトさんといった人気サッカー漫画家がサイン会を開き、柏のスタッフだけでなくサポーターや流経大サッカー部員もボランティアとして手伝い、関東のロアッソサポーターもグッズ販売ブースの中に居ました。

そうやって、たくさんの人たちの手助けがあって、柏レイソルのホームスタジアム日立台での、”異例”で、それは“歴史的”でもある熊本ホームゲームが運営されました。

水戸のゴール裏からは「ロアッソ熊本!」のエール。これに応えて熊本からは「サンキュー!水戸」のやりとり。水戸はここ3試合勝利から遠ざかっているものの、千葉やヴェルディを下している難敵。対する熊本は、佐藤や黒木、中山といった選手が復帰してきたものの、代わって清武、高柳が体調不良を訴え、齋藤は前節の接触で骨折し8週間の離脱。満身創痍のチーム状態に変わりはない。

そんななかで指揮官・清川監督が選んだ布陣は3-4-2-1。薗田がCBの真ん中で初先発、片山と藏川をサイドハーフに上げますが、実質守備の際には5人で守ることによって「最低でも勝ち点1を」(熊日)という”現実的”な策を取って来ました。

20160522水戸

そしてプレスに行くところと行かないところをチームとして意思統一。前節、断ち切られた”組織的に連動した守備”を再構築してきました。攻撃は主に大きなサイドチェンジで片山を走らせる。しかし、どうしてもチームの重心は後ろにあるためか、単発な攻撃に終始します。どちらも先に失点したくないというような、”堅い”前半でした。

ある意味今日のスタジアムの”異様”な雰囲気に、水戸の選手たちにも気後れがあったのかも知れません。そんなイレブンにハーフタイム、敵将・西ケ谷監督は「熊本に対して失礼」と一喝したのだという(熊日)。後半、水戸の球際が厳しくなり、熊本のピンチが増え始めます。

前節、後半に入って誰の目から見ても明らかにガタッと運動量が落ちた熊本でしたが、今日は随分違いました。「一試合やったことでコンディションは大分上がってきたのでは」と、スカパー解説者の水沼氏が言うように、水戸の攻勢にも粘り強く対応し続けている。

ただ、マイボールになっても攻守の速い切り替えどころか、攻撃の糸口を探せず後ろで回してしまう。68分には誰より試合から遠ざかっていた薗田が痛んで、鈴木と交代。アクシデントとも言えるカードを切ってしまった。

75分を過ぎるころから、少しずつ、少しずつ足が止まりはじめ、守りのチェーン(鎖)が断ち切られていくと、81分、右サイドでチェイスに行った藏川が交わされ、空いたスペースを船谷に使われると着ききれない。グラウンダーのクロスをニアで三島に合わされ、失点してしまいます。

熊本にも惜しいチャンスはありました。シュート数の記録には残らなくても、あと一歩という好機が。ただ、終盤の片山からのアーリークロス。ファーサイドで巻が落としたボールに、ゴール前飛び込める選手が誰もいない。嶋田も足を攣っていた。このゲームを象徴するシーンだったかも知れません。

熊本・新市街に設けられたパブリックビューイングの会場で、彼の地の”ホーム戦”の終了ホイッスルを聞いた700人あまりのサポーターたちは、「ロアッソ熊本!ロアッソ熊本!」と連呼し、選手たちを労いました。その大きなビジョンでは、これまた異例にも敗戦チームから巻のインタビューが映し出されていた。

インタビュアーの質問に感情を抑えるようにして言葉を選びながら。「僕らは・・・勝利というものを熊本に持ち帰って・・・みんなで笑いたい・・・。そのためには・・・歯をくいしばって・・・もう一回・・・何度でも、何度でもチャレンジして・・・勝ちに繋がるまで・・・這い上がっていきたい」(スカパー)。そう搾り出すように言った巻の頬に、最後こらえきれずに一筋の涙が流れました。

早く熊本に勝利を届けたい。リーグ戦復帰はなったものの、巻を始めとした選手たちの思いはそこにありました。だからこそ歯がゆい。だからこそ負けたことが悔しい・・・。

しかし、熊本蹴球通信で井芹さんが、「少なくとも前節からはコンディションも上がり、離脱者もいるためまだ万全とは言えないまでも、戦える状況に戻ってきた点では1歩前進したと捉えたい」と書くように、今日の試合は大きな収穫を得たような気がわれわれもします。

インフルエンザの蔓延や怪我人は、リーグ戦のなかで普通に起こりうるピンチだし、これまでもあったこと。後半の試合運びの難は、開幕からのそもそもこのチームの課題。そんななかで最良のコンディションの選手たちを選び、そして現実的な戦い方で、1点でもいいから勝ち点を奪う。そんなフェーズに移ってきたのだということ。ただ、熊本も必死だが、相手チームも必死に闘っているわけで、そう簡単にいかないことはわかっています。

最後に、スタジアムの供用だけでなくあらゆる面で支援いただいた柏レイソルと、そのサポーターの皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。そしてわれわれはと言えば、今日までの感傷的な涙は拭い去って、さらに強い気持ちをもって次に向かっていきたいと思いました。「何度でも、何度でも…」。巻の決意に応え、支援いただいた皆さんに報いるためにも。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/559-035e769b