【J2第15節】(ノエスタ)
熊本 0-2(前半0-1)町田
<得点者>
[町]鈴木孝司2(29分、76分)
<警告>
[町]重松健太郎(20分)
観衆:2,509人
主審:井上知大
副審:川崎秋仁、村田裕介


「震災を言い訳にはしない」と常々選手たちは言っていました。そのとおり、リーグ戦復帰3戦目となる今日の試合は、選手たちのコンディションはほぼ以前どおりと見受けられたし、失点の部分はGK佐藤が試合後、「厳しさが足りない」(熊日)と言うように、一瞬の甘さがもたらしたもの。しいて言うなら、無得点が続く攻撃の部分で、まだ本来の連携が築き上げられていないという点でしょうか。

神戸ノエビアスタジアムのゴール裏は、真っ赤に染められていました。それはしかし、いつもこのスタジアムを埋め尽くすクリムゾンレッドではなく、この日一日だけの(正確に言えば2013年11月の神戸との対戦以来の)プーマレッドでした。

リーグ戦復帰からのホーム第2戦開催に、スタジアムの提供を申し出てくれたのはこの神戸。1995年に阪神・淡路大震災で大きな打撃を受け、そして長い年月を経て復興を果たした地。あの頃のヴィッセル神戸は、まさに今の熊本に投影できるでしょう。色々な苦難があったことを聞いています。

熊本が今日この”ホーム”に迎えるのはJ3から今季J2復帰なった町田。ここ2試合は連敗してはいるものの、現在3位に付ける難敵。対する熊本には、インフルエンザから清武が戻り、右サイドハーフには中山、ボランチの一角にはキム・テヨン。右SBには黒木が入りました。

20160528町田

入りはいい。黒木のダイレクトの低いクロス。クリアを清武拾ってボレーシュートは枠の左にそれたものの、実に積極的。キム・テヨンが常にサイドチェンジを意識してボールを散らす。対する町田はブロックを敷いてカウンターのチャンスを伺う。そんな互角以上の戦いが出来ていたんですが…。

29分、右サイドを”なんとなく、アレ?という感じで持ち運ばれると、サイドチェンジ気味のクロス。ファーサイドの鈴木崇文に渡ると、そこからPA内にいた鈴木孝司に柔らかく入れた。鈴木孝司がそれを点で捉えてバックヘッドでゴール左隅に流し込む。町田が先制点。

このシーン。鈴木崇文をフリーにし、鈴木孝司への植田の”当たり”も緩慢と言えましたが、その前にするすると左サイドの侵入を許した。井芹さんが熊本蹴球通信に書くところによると、ラインを割ったとアピールしてセルフジャッジで足が止まり、リアクションが遅れたのだという。いただけない緩みと言うのは厳しい指摘でしょうか。

1点ビハインドの後半。途中から中山に代えて嶋田。徐々に熊本の好機が訪れます。64分、嶋田から左の清武にパス。オフサイドを掻い潜った清武が角度を作ってシュートはわずかに枠の右に反れる。

69分には左の片山からのクロス。途中から入った巻にDF2人が競る。落ちてきたボールをテヨンがシュート。DFのブロックに当たり、ゴール近くに高く上がった。フリーの嶋田がヘディング。しかしボールはわずかにバーの上。73分にも大きなサイドチェンジから右サイドの黒木。DFに一度奪われそうになるが再び拾ってエンドラインぎりぎりからのクロス。中央清武のヘディングはしかしGK正面。

しかしそんな熊本の好機の連続のあと。76分、これも途中投入の町田の戸島が、大きな体躯を生かして黒木を制し左サイドを突破するとクロスを上げる。スライディングした黒木に当たって高く上がったボール。園田が躊躇するとバウンドしたところに町田の井上が頭で繋ぐ。それをエリア内にいた鈴木孝司、ダイレクトで反転してシュート。GK佐藤も一歩も動けない。ゴールに突き刺さります。

重い2点目。地面を蹴って悔しがる清武の姿。

熊本はアンデルソンを入れる。85分、そのアンデルソンが右サイド奥で粘って奪うと、すかさず低いセンタリング。ニアにいた巻のヘディングはしかし枠の右。

アディッショナルタイム4分も使い切り、熊本は一矢報いることもできず、敗戦の笛を聞きました。リーグ戦復帰後3連敗。

「今日、俺たちは全力で戦いにきた。それが盟友熊本への最大のリスペクト」。試合前の町田のゴール裏に掲げられた横断幕には、そう書いてありました。その言葉どおり、2連敗で見えた課題を修正するように、町田は全力で向かってきた。それはリーグ3位(この試合結果により2位に浮上)に値する力でした。前節の水戸もまた西ケ谷監督は「熊本に対して失礼」と選手を鼓舞して戦ってきた。

もちろん勝負ごとに同情や容赦はいらない。熊本も今出せる全ての力を出し切って戦っていますが、対戦相手もまた、このある意味難しくやりにくい熊本戦に全力を出し切って向かっている。だからこそ勝利への壁はいっそう厚いものになる。

ただ、前節でも言いましたが、熊本はもう十分に“戦える”だけの状態に戻っていると感じています。変な表現ですが、普通に試合をして、普通の負け方をした。勝敗を分けたのは、単に彼我の力の差であったかと。

「被災地に勝利を持って帰りたい」という気持ちを持つ選手たちは敗戦を前にして悔しい。その悔しがる姿を見るにつけ、われわれも胸が締め付けられるような気持ちになります。

「復興のシンボル」のような重責を背負わせてはいけない。そう何度も書いてきました。チームはある意味、“復旧”を果たしました。やっと普通に戻ったのです。そうであるならば、今節の課題の修正を練習に落とし込み、さらにコンディションを上げ、戦術を練り、次の試合に臨む。その”通常”の繰り返しの先に必ず勝利をつかみとることができる。

さらに言えば、熊本のチーム力では、他のチーム並みにコンディションが回復して、ゲームができる状態に戻っただけではなかなか勝つのは難しいんだと。そこからさらに、相手を圧倒する球際と、圧倒する切り替えと、圧倒する運動量があって初めて勝機が見いだせるんだと。アグレッシブさとハードワークが信条。それがチームコンセプト。そのなかで勝ち点を拾ってきた。だからこそまだまだ。厳しいけれど、そうなのだと思いました。


最後に、今節の会場を提供し、運営を支援していただいたヴィッセル神戸と多くのサポーターの皆さんに心からの感謝を伝えたいと思います。また、そのほか確認できただけでもガンバ、セレッソ、京都、鳥栖、名古屋、広島、徳島、磐田、清水、横浜FC、柏、奈良クラブ、鹿児島などなど多くのJリーグサポーターが応援に駆けつけてくれたそうです。本当にありがとう。

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