【J2第17節】(ベアスタ)
熊本 5-2(前半5-0)金沢
<得点者>
[熊]平繁龍一2(1分、31分)、清武功暉(9分)、キム・テヨン(36分)、黒木晃平(44分)
[金]山藤健太(49分)、安柄俊(78分)
<警告>
[熊]高柳一誠(54分)、片山奨典(70分)、清武功暉(79分)
[金]可児壮隆(9分)、安柄俊(47分)、辻尾真二(71分)
観衆:2,638人
主審:清水勇人
副審:中井恒、中野卓


先制点がこの試合を決めたと言ってもいいでしょうね。胸のすくような得点でした。

キックオフからの流れ。ゴールラインぎりぎりで奪った嶋田の粘り。平繁がバックステップでDFの死角に入り直して右足一閃。開始からわずか20数秒のこの得点が、選手たちをいろんな呪縛から解き放って、ゴールラッシュの呼び水となりました。

9分にはPA左で得たFKを、清武が速い弾道で直接ニアに蹴り込む。31分には岡本の高速グラウンダークロスに、DFの後ろから滑り込んだ平繁が押し込む。36分にはCKからキム・テヨンのバックヘッドでゴール右に流し込む。圧巻だったのは前半終了間際、金沢のセットプレーを凌いでからのカウンター。嶋田が左サイドを駆け上がると、右サイドからは黒木が猛烈ダッシュ。ピンポイントで合わせて5点目とします。

その1点1点が、これまでの辛さや悔しさを吹き飛ばすようで。併せて、これまでお世話になった柏や神戸だけでなく、応援に駆けつけてくれた多くの他のJチームサポーターへの感謝のゴールのようでした。それにしても前半放った5本のシュートがすべてゴールに結びつくなんて…。

20160608金沢

この日の”ホーム”は鳥栖スタジアムを貸していただきました。この通称”ベアスタ”のピッチに立つのは実に2011年12月以来。あの「堅忍不抜」の横断幕で、鳥栖をJ1に見送って以来です。

あれから約束どおり鳥栖はJ1で待っていてくれている。この日、山口佐賀県知事は挨拶で「ロアッソとサガンの待ち合わせ場所はJ1です!」と言ってくれ、バックスタンドで赤い服をまとってくれていた鳥栖サポからは「友よ ようこそベアスタへ いつでも力になるばい」という横断幕が掲げられました。この温かさと絆は、鳥栖ならではです。そんな”ホーム”アドバンテージにも大いに助けられましたね。

そして試合前日の宿舎での夕飯後、GK佐藤の呼びかけで、選手たちだけでの話し合いをしたのだという。やはり「勝てなくて、内容も悪くて、チームの雰囲気も悪くなっていった。みんなどこか自信なくやっていて、迷いながらやっている感じだった」(サッカーキング)と岡本は言う。それは「ミーティングなんて大げさなものではないんですが、みんなで少しずつでもしゃべってもらった」。しかし、そのなかで「一人ひとりが『何とかしなきゃ』と思う中で、チームとして機能しなくなっていた。それぞれが一人でプレッシャーを感じていて、『みんなで戦う』ということがなくなっていたんだと気付けた」(岡本)のだという。メンタルを”整理”して共有する貴重な時間が取られたことは、この試合を迎えるにあたって重要なことでした。

「コンディションが良く、近いうちに点を取ると思っていた」(清川監督)と言う平繁の、実に平繁らしい2得点。清武本来の力を示したようなFKやドリブル。岡本や嶋田の視野の広いアシスト。けれど前線の選手だけが切れきれだったわけではなく、高柳やキム・テヨンが要所を締め、片山や黒木がサイド攻撃に加わり、DFの園田、植田からのフィードも効いていました。

さすがに後半、プレスが弱くなって2失点。PKの失点はともかく、CKの流れからの1失点目、あの角度から決められるのは、これまでの繰り返しのようで。課題が残ります。ただ、後半をどう凌ぐのかというこの課題は開幕以来のもの。その本来の課題に”戻ってきた”のだとも言えます。

震災以降の復帰戦で、「勝ち方を忘れていた」と巻は言いました。「どうすれば勝てるのか」と清武も悩んだ。選手たちは相当苦悩していたのではないかと。待ち望んだ勝利なのに、試合後の選手たちはまだどことなく固い。喜びを爆発させるということではない、とにかくまずホッとしたという表情。「ようやく勝利を納められた」。その正直な感想に、選手たちはそこまで追いこまれていたのかと。

佐賀大学時代、鳥栖の強化指定選手としてこのスタジアムでJデビューを果たした黒木は、インタビューで感極まって答えに詰まりました。「鳥栖でこんな形で試合ができて、ゴールまでできるとは思っていなかった」(熊日)と言いました。この震災での経験。色々な思いが交錯した涙でした。

チーム全体のメンタルコンディションを取り戻したともいえるこの試合。「ここからがスタート」と主将の岡本が言いました。次のアウェー群馬戦を踏ん張って、次のホーム戦も鳥栖ベアスタでの開催。また、鳥栖の方々の力を借りることになります。いつか我が家へ帰る日まで勝ち続けようじゃないか。決してひとりじゃないんだ。そんな気持ちにさせてくれる今日のスタジアム。選手だけではなく、われわれファンのメンタルも前に向いたような。今日の勝利と鳥栖の仲間たちの気持ちを力にして。

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