【J2第20節】(長良川)
岐阜 2-3(前半0-1)熊本
<得点者>
[岐]田代雅也(68分)、瀧谷亮(90分+3)
[熊]高柳一誠(43分)、藏川洋平(88分)、キム・テヨン(90分+5)
<警告>
[岐]岡根直哉(58分)
[熊]高柳一誠(23分)
観衆:4,507人


劇的な幕切れでしたね。まさにラストワンプレー。
「直前に審判が『残り15秒』と言っていたので、『最後だから』と思い切りよく蹴った」(熊日)とキム・テヨンは言う。「ゴール直前でうまく落ちてくれた」(同)ボールを、GK高木は一歩も動けず見送るしかない。そして同時に終了の笛。まるでバスケットで言うところの”ブザー・ビーター”のような結末でした。

接戦でした。熊本が先制すると同点にされ、勝ち越し点を挙げると追いつかれ…。

震災後、延期された試合が組み込まれ、これから5連戦の過密日程になる初戦でした。そのスケジュールを考慮したのか、熊本は前線に平繁ではなくアンデルソンを入れ、右SBを藏川にしてきた。

対する岐阜は勝ち点24で10位に位置する。得点力もあるが失点も多い。ラモス監督が率いるせいもあるのか、乗せると怖いが、非常に波があるような。南米っぽさを感じるチーム。警戒すべきは前節2得点で横浜を下した、前線のレオミネイロの個人技。

20160626岐阜

試合は開始から激しい主導権争い。ボールサイドに人数を掛ける岐阜に対して、サイドを広く使っていきたい熊本。画面越しにも両チームのタマ際のぶつかり合いの音が聞こえてきます。

11分。清武が岡本に預けると猛然とダッシュ。岡本からの後ろからのパスをPA内でスライディングで浮かせたシュート。飛び出してきたキーパーを越えて…、ボールはわずかに枠の上。これが熊本のファーストシュート。

対する岐阜のファーストシュートは、藏川が右サイド奥で磐瀬に入れ替わられマイナスパス。それをレオミネイロが一蹴するもサイドネット。

23分。中央での岐阜のFK。風間がGKとDFの間に送る。GK佐藤が迷ったのか、抜けてきたボールをなんとか足でクリア。続く29分には熊本のテンポのいいパス回しをカットした岐阜のカウンター。レオミネイロに渡るとジグザグドリブル。PA前からのシュートは、ポストに当たり助けられる。

熊本のアタッキングサードでのパス回しも岐阜の厚い壁に遮られ、逆に岐阜に押し込まれると、選手間が間延びする。スカパー解説者の森山氏が、そんな熊本の劣勢をグチグチと指摘し始めた時間帯でした。

43分。藏川のアーリークロスをアンデルソンがポストで落とす。拾った高柳と難しい体勢からのワンツー。DFの裏に抜け出した高柳の足元に渡ると、落ち着いてGKの逆を突いてゴール左隅に流し込む。高柳の移籍後初ゴールで、熊本がいい時間帯に先制します。

1点ビハインドの岐阜は後半から難波に代えて瀧谷を投入。苦手の難波を下げてくれて、少々ホッとする。

後半の入りは少々岐阜に持っていかれましたが、15分過ぎたころには持ち直して熊本の時間帯。しかし、CKの場面で園田がフリーにも係わらず連続でふかし、好機を逸すると、勝利の女神がそっぽを向いた。68分、リスタートから岐阜の水野がアーリークロス。ファーで阿部が粘って、同サイドにいた田代が角度のないところから撃つ。GK佐藤が動けずゴールに転がる。同点。

勢いづいた岐阜の時間帯。リオミネイロが持つと止められない。ここからベンチワークが忙しくなる。熊本は嶋田に代えて中山を投入。岐阜が風間に代えて田中パウロ淳一を入れると、熊本は岡本を下げて薗田を投入。今日のこの交代は、守り切るためではなく、藏川、片山を一列上げて追加点を狙うため。

その交代カードが奏功します。88分、右サイド中山からのサイドチェンジぎみのクロス。ゴール左45度でワントラップした藏川がシュート。ゴールに突き刺します。しかし、この場面、なぜ藏川がこのポジションにいたのか?そして、熊本はこの終了間際のいい時間帯に勝ち越し。これで完全に勝ったと思ったのです。多分、誰もが。

示されたアディッショナルタイムは4分。妥当と思える時間でした。しかし岐阜のFKが続く。キッカーは曲者の高地。最初のキックはファーでGK佐藤が抑える。しかし続く2本目のキックは佐藤が飛び出してパンチング。それが丁度ファーサイドの選手に納まると折り返す。中央でマイナスに切り返されると、PA外から走り込んだ瀧谷にシュートされてゴールネットが揺れる。土壇場での再同点弾。がっくりとピッチに倒れこむ熊本の選手たち。

実質、画面に表示された時間は4分を過ぎていました。もう駄目だなと思ってしまいました。岐阜もよく粘った。すごいな。引き分けかと。

しかし、それからが冒頭のシーン。自陣ハーフウェイライン付近からのリスタート。岐阜のDF岡根が撥ね返したところをテヨンが拾って思い切って撃つ。それは無回転だったのでしょうか。右ゴール上隅に突き刺さる。GK高木は一歩も動けず。ボールの軌道を目で見送った後の唖然とした表情。膝から崩れ落ちる。

決勝点を決めたテヨンは、大の字に寝そべったあと、仲間に手荒い祝福を受けると、今度はピッチに顔を埋めて突っ伏した。喜びを最大限表現しました。

思えば。アディッショナルタイムで追いつかれたことは過去幾度かあったように思いますが、終了間際に勝ち越し点を上げて逃げ切ったことは過去にあったでしょうか。覚えがありません。こんな劇的な勝利は、できれば熊本で多くのファンの前で見たかった気もします。

それにしても先発にしたアンデルソンが高柳のシュートのアシストになり、同じく藏川が、交代カードの中山のアシストからゴールを決めるなど、清川采配がみごと的中。“後ろ”の選手が追い越して点を取る。今の熊本。誰が出ても、同じチームコンセプトが描けるということなのか。これはこれから続く連戦のなかで、大きな強みに感じます。

熊本はこの勝利で、他チームより5試合未消化ながら、暫定順位を11位にしました。

震災後4連敗。その後は3勝1分。そして今節「5連戦の最初を勝てたことは大事」。この日のヒーロー、キム・テヨンはそう言います。各年代の韓国代表を経験。Jの5チーム、そして中国、韓国を渡り歩き、熊本には練習生からの契約。途中加入の直後に地震に見舞われたわけで…。苦労人。それにしても、あの状況下で審判の日本語をよく聴き取り、ラストワンプレーを選択したんだなあと。こんなプロフェッショナルがチームにいることを改めて心強く思います。難敵待ち構える連戦に向かうエネルギーが一段と高まってきましたね。

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