8月28日(日)
熊本 2-1 FC.TOSU [うまスタ]
[熊]平繁龍一(45分)、キム・テヨン(90分+1)
[F]丸山大介(52分)


いやはや。それにしても手こずりましたねぇ。これまで何度も見てきたような、格下相手の天皇杯初戦の難しさが表れた試合でした。

FC.TOSUは、2014年創設ながら昨年度は佐賀県リーグで優勝した新進気鋭のチーム。この天皇杯の県予選では、決勝で佐賀大学を下して初出場を果たしていました。

迎え撃つ熊本は、GK金井、左SBに上原、ボランチの一角に上村、右SHに公式戦初出場となる小牧、2トップ平繁の相方にはアンデルソンを配し、この過密日程のなかの連戦を戦います。

20160828FCTOSU

とにかく、5-4-1でゴール前を固めたTOSUに対して、開始から終始敵陣内で試合を進める熊本でした。しかし、ボックス内に敵が林立していてスペースがない。完全に引いて構えるTOSUに、熊本はサイドチェンジで揺さぶりますが、DF5人とMF4人がしっかりスライドして、広げられない。食いつかせたところの空いたスペースを使いたいのですが、うまくイメージが共有しない。強烈なミドルシュートも、熊本出身のGK松岡にナイスセーブで防がれます。

TOSUはと言えば、しっかり守ってカウンター狙いかというと、ここまで引いてしまっていては、ボールを持っても押し上げが効かない。ただただゴール前を守る戦術。佐賀県予選決勝のときのように、最後PK戦までもつれさせて、当たっている松岡で”勝つ”という戦術だったのでしょう。

35分頃。あれはアンデルソンだったのでしょうか、遠目でわかりませんでしたが、Pアークの左からのFK。右足から放たれた絶妙のキックは、しかしバーに嫌われてしまう。平繁のシュートはポスト。最後の最後、身体を投げ出して撥ね返しているTOSUでしたが、バーやポストも味方している。

このままで前半終了かと思わせた最後のプレーでした。45分、右サイド奥で得たFKのチャンス。中山がグラウンダーで速いボールを入れると、ニアに飛び込んだのは平繁。DF二人に詰め寄られながらも一瞬早く足を出し、浮かせるようにゴールに決め、何とか前半のうちに先制しました。

後半開始から熊本は、上原と高柳に代えて、清武とテヨンを入れる。連戦の疲労や調整を考慮しての交代だったでしょうが、格下相手の一方的な試合展開のなかでの先制、そしてこの2枚替えが、なんだか選手たちのなかに、トレーニングマッチの雰囲気を醸し出したのではないでしょうか。あとは時間とともに追加点も取れていくだろう、というような…。

そんな”緩さ”が漂う52分。TOSUがボールを持つと自由に回され、CBの裏にループパスを許す。競った丸山がこれを収めて、ゴールに流し込みます。同点。

割とアウェー寄りのメインスタンドに居たのですが、少ないながらも駆けつけたFC.TOSUのファン、サポーターが一気に沸き上がりましたね。もう天下を取ったかのよう。それはそうでしょう。Jリーグチーム相手に、流れから点を奪ったのですから…。

これでまた振り出しに戻ったゲーム。TOSUは益々ゴール前を固める。熊本は中央から、サイドから、あるいはCKからの流れのなかで、雨あられのようにシュートを浴びせるのですが、これを巨大なダムのように堰き止めているTOSU。それにGK松岡のスーパーなセーブ。

この日、試合開始から降っていた雨はどんどん激しいものとなり、芝も重くなると、TOSU選手の足も止まり始めますが、ゴール前で守り切り、延長戦のために体力を温存しているようでもありました。

熊本は園田を入れて3バックにすると、黒木と清武をそれぞれ1列上げて攻勢に出ますが、それでもゴールが割れない。前半と同じように、このまま終了かと思わせた時間帯でした。鈴木が左サイド奥からクロスを上げると、TOSUのゴール前3人のDFの頭を越えて、ファーに飛び込んだキム・テヨンが高い打点のヘディングでズドンと突き刺し、決勝点とします。瞬間、電光掲示板を見ると45分でした。

連戦が続くだけに、「延長だけは避けたい」(熊本蹴球通信)と言っていた清川監督。なんとか、本当にギリギリの時間で、勝ち越すことが出来ました。浴びせたシュートは実に35本。もちろん全てが枠内ではなかったにせよ、ことごとくTOSUに撥ね返され、苦戦を強いられました。

選手評。上村は、ギリギリまで相手を引き付けておいてという意図は終始見えたのですが、そのパスを貰った同僚に意図が通じなかったか、遅攻になりました。小牧は右SHのときは、よく突破できていましたが、期待した左SBになったら、「やるべきことができなくて悔しい」(熊日)と本人も反省するように、うまく連携できませんでしたね。アンデルソンは、うーむ、身体が重いのでしょうか、オフサイドの数はあいかわらずですが、シュートも精度を欠きました。

しかし、数々の”秘密兵器”を、公式戦の辛勝とはいえ実戦で試せたことは、今後間違いなくチームのためになりました。選手起用について問われた清川監督が「なかなかゲームに出ていない選手もいるので、総動員でこの連戦を乗り切っていかなきゃいけないということを加味して」(熊本蹴球通信)と言うように。

”トレーニングマッチの…”という悪い表現を使いましたが、そもそものトレーニングマッチに関しては、指揮官はこうも言っています。
「連戦ということもあってトレーニングマッチができなかったので、ゲーム体力やゲームでのパフォーマンスを見ることができませんでした。いざ公式戦に入って、いろんな緊張だとか、足を攣ってしまったりする選手が出てきたんですけど、そこはトレーニングマッチができていれば、もっといいパフォーマンスを出せたのかなと思っているんですが、そこができていなかったのは、申し訳ない」。そう選手たちに謝ります。

連戦のせいでもあり、交通事情等のせいでもあるでしょう。こんなところにも震災の影響が…。

しかし、敗れたTOSUの選手たち、そしてそのファンやサポーターの人たちには笑顔がありました。創部3年目で天皇杯に出場して、Jのチームを苦しめた。得点シーンも見られた。あと一歩だった。またホームに帰って、自分たちのリーグを戦っていこう。

そんなFC.TOSUに対してエールを送るわが熊本のゴール裏。そしてホーム側の観客に整列してお辞儀するTOSUの選手たち。清清しいシーンが、まさにカテゴリーを越えて戦う天皇杯1回戦らしく。われわれを初心に帰らせるようでもありました。


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