7月1日(土)
【J2第21節】(えがおS)
熊本 4-0(前半3-0)東京V
<得点者>
[熊]八久保颯(26分)、安柄俊(44分)、上村周平(45分+2)、黒木晃平(72分)
<警告>
[熊]園田拓也(65分)、光永祐也(70分)
[東]アラン・ピニェイロ(90分+3)
観衆:10,208人
主審:藤田和也


このカテゴリーには勝って当然の相手もいなければ、やる前から負けが決まっている相手もいないわけで。そんなことは百も承知でしたが、4試合負けなしで3位につける好調ヴェルディ相手に、こんな大勝を演じることになるとは正直思ってもいませんでした。

試合前のインタビューで「(相手は)監督が代わって分析する試合も少ない。ただいつもの自分たちの試合をやっていくだけ」と、ヴェルディのロティーナ監督は言う(DAZN)。なんとなく普通にやれば勝てるだろうというようにも聞こえ。それは山口戦のときのわれわれがそうではなかったかとも思い出させる。

一方の池谷監督は、「追い込まれた1週間だった」(熊本蹴球通信)と試合後振り返る。「相手のゲームはかなり見たし。そういう意味では、うまく対策がとれた結果」だと。そして、監督が代わってから「やってきたことがやっと実った。選手たちが約束事を守って、その上で点も取れた」(DAZN)と答えます。

熊本は、スタメンを前節から5人入れ替えてきました。しかし、奏功した天皇杯・水戸戦にどちらかといえば近いのではないかという印象を受けた。それは3バックの真ん中にキーマンの村上が入ったからでしょう。水戸戦は直には見ていませんが、評判どおり持ち上がったりパスを散らしたり、最後尾からタクトを振る。

あとは左WBに入った光永、シャドーの八久保の働き、そしてなんと言っても1トップの安に期待が持てました。

20170701ヴェルディ

開始から熊本は、CBのイムから右の裏のスペースにロングボールで安を走らせる。左の光永もアーリークロスをDFの背後に送る。まずはボールを持ったらすばやく裏を狙う意図が見える。

相手のボールのときは5バック。前の5人でプレスに行く。敵の前線に入ろうかというボールには素早くチェックに行く。ミスも少なくないが、チャレンジし続けている姿勢は、前節山口戦にはなかったこと。

あとで見返したDAZNの中継で、レポーターが八久保の良さを「スピードアップ、間で受ける、裏を突ける。この3つだとコーチが言っている」と紹介し、それに対して解説の水沼氏が、「今まさに熊本に必要なこと。局面に応じて休みなくやって欲しい」と要望した、ちょうどそんな時間のあとでした。

園田のカットから上里。上里がゴール前に走った八久保に長いパスを送るがこれは収まらず。しかし、続いても後ろで回して、左サイドタッチライン際の園田がワンタッチでワンバウンドのスルーパスを送ると、八久保が裏をうまく取った。落ち着いてGKも交わすと、ゴールに流し込みます。先制点!

「熱くなれ」。この日の試合前、震災ボランティア時の巻との約束を果たしに来たと言って、大黒摩季さんが迫力ある歌声で場内を盛り上げてくれましたが、その歌のとおり一気にスタジアムのボルテージは上がってヤバイ”ハイテンション”。

しかし、ヴェルディもまだ落ち着いていました。勢力を立て直すとFKやCKで熊本のゴール前を襲う。前節の2失点も含め、セットプレーの失点の多さが目立つ熊本はこの試合、ゾーンディフェンスからマンツーマンに変更。「責任をハッキリしようということだ」と言う水沼氏。

試合の流れというのは面白いもので、先制点は奪ったものの、このあとすぐに同点にされなかったことが、この試合の勝因とも思えます。その立役者はなんと言ってもGKの畑でした。

ヴェルディの右WB安西が一度アランに預けて、ヒールパスで貰いなおすと右45度からシュート。これを畑がスーパーセーブ。続いても右からの安西の強烈シュートを横っ飛びでパンチング。拾った左WB安在のシュートは枠の上。今度は右から回して中央の高木に繋ぐと、高木が反転するように村上を交わしてシュート。これも枠内でしたが、わずかに畑が触ってバーに当てる。再三の決定機を防ぎます。

移り気な勝利の女神がヴェルディにソッポを向くと、今度は熊本に微笑みかけます。「このまま追いつかれずに前半を終えたい」とわれわれが思っていた44分、上里が前の安にパスをつけると、安が持ち上がりながら、追い越して上がって来る八久保へのパスと見せかけ、意表を突くミドルシュート。無回転のボールがGK柴崎の前で変化してゴールに突き刺さる。

それだけで収まりません。前半アディッショナルタイムに入ると、スローインを受けた安が一人でPエリア内に持ち込む。3人に囲まれながら、潰されそうになりながら出した。信じて顔を出した上村が貰ってゴール左隅に蹴り込みます。上村はうれしいプロ初ゴール。

なんとなんと3-0という点差で後半に折り返した熊本。しかし、ヴェルディは前節4点で町田を下しているし、その前は愛媛に3点で同点に追いついている。短い時間で一気に得点を加算する力を持っている。安心はできませんでした。

熊本は時間を消費するように、ゆっくりと攻める。「絶対ゆるめないこと」「最後までさぼらないこと!」というハーフタイムの指揮官の指示を守りながら。

渡辺に代えて梶川。畠中に代えて橋本。そして4バックにしてヴェルディが勢いを持とうとしていた72分でした。上里が自陣から、右サイドで高く上がっていた黒木にピタリとパスを当てる。黒木がドリブルで勝負すると見せかけて、フリーでミドルシュートを撃つ。地を這うようなグラウンダーのシュートは、ファーポストに当たり、ゴールに吸い込まれ4点目とします。

こうなるとあと欲しいのはクリーンシート。既に八久保に代えて岡本が投入されていましたが、次に中山が足を攣って上原に交代。布陣は完全に5バック。選手全員がかなり疲れていました。上里を右に回して、上原がボランチに入る。

次々に襲うヴェルディのシュート。熊本はPエリア内に林立してクリア一辺倒。あとはもう0(ゼロ)で終わりたいという気持ちだけ。不甲斐ない失点で敗戦を見せ続けたホームのファンのためにも。それはまるで「1-0のように守った」と水沼氏が言う。

園田も足を攣った。しかし、残り時間を耐えられると判断したベンチは、最後の最後のカードで安に代えて巻。前線からの守備をゆだねる。アディショナルタイムには大チャンス。カウンターから岡本、巻、岡本と繋いで、右から上がってきた上村。上村のクロスはしかし、中央の巻はもちろん、ファーの岡本の頭も越えて抜けてしまう。そして、終了の笛が吹かれました。

4得点のうち、組織的に崩したのは1点目と3点目。安の2点目と黒木の4点目は、個人の技術のようにみえます。しかし、その2点もまた、フィニッシュで終えるというチーム戦術が浸透したからのゴールではないかと。

無失点で勝利したことについて指揮官は言う。「クロスに対してまず良いポジションに戻るということ。後半はズレてきたところもありますけど、そこで良いポジションを取れているということ」(熊本蹴球通信)だと。しかし、それに加えて「ボールに対する執着というか。最後も皆がシュートブロックに行っていたし、迫力もあったし、選手がより勝ちたいという気持ちを持ってプレーしていたんじゃないか」と。

あの名手ヴェルディの選手たちのシュートが、最後の最後に枠を外れたのも、畑の存在感に加え、そんなところが大きかったのかも知れない。

7試合ぶりの勝利。ホームに限っては実に4月16日の松本戦以来。そんな鬱憤が、1万人以上を集めたスタジアムの夜空に、勝利の凱歌「カモン!ロッソ」をこだまさせました。

4-0。大勝のようでもあるが、タイトルどおりの100%の完勝でもない。点差に隠れてしまいそうですが、課題もしっかり残りました。

けれど、自分たちの練習を信じて、自分たちで結果を得た。勝って当然の相手もいなければ、やる前から負けが決まっている相手もいないことを。シュートは打つべきだということを。今節の勝利の意味として、そのことが大きな自信に繋がったということは間違いありません。

TrackBackURL
→http://sckumamoto.blog79.fc2.com/tb.php/620-46e6840e