10月14日(土)
【J2第37節】(西京極)
京都 2-1(前半1-1)熊本
<得点者>
[京]石櫃洋祐(38分)、田中マルクス闘莉王(71分)
[熊]オウンゴール(22分)
観衆:7,483人
主審:廣瀬格


2試合連続で、一番警戒していた選手に決められてしまいました。前節は「あれを放さない、しっかり最後まで頭を入れる」と“一瞬の厳しさ”を求める飯尾和也氏の言葉を紹介しましたが、「決勝点の場面は防ぎようがなかった」(熊日)と池谷監督は言う。マンツーで付いていた植田は、「自分が跳んだ後に跳ばれた。もう少し自分が我慢できていれば」(同)と後悔する。

20171014京都

1勝3分9敗と、一方的に分が悪い京都とのアウェー戦でした。高さのある京都。「闘莉王とイ・ヨンジェに入ったあとのセカンド争いがキーになることは確か」(熊本蹴球通信)と、戦前井芹さんも指摘していましたが、序盤はまさにそこがうまくいかない。ロングボールを跳ね返したところ、落ちた中盤での京都のプレスが激しくて、押し込まれる。

8分頃、京都の波状攻撃のなか右45度からのミドル。これはPA中の黒木がヘッドで跳ね返す。12分頃には左サイドに回され、石櫃からのクロスにファーで闘莉王が高い打点で打ちつけた。間一髪GK畑がセーブしましたが、後から考えるといずれもこの日の京都の得点を予兆させるようなものだったのです。

しかし流れを変えたのは上里からの一本の長くて速い左サイド奥へのグラウンダーパスでした。これには惜しくも片山が追いつけませんでしたが、京都の重心を少し後ろにさせた。中盤で拾えるようになると18分には上村がDFの裏を取ってPAに侵入しますが、GKに阻まれます。

京都のディフェンシブゾーンを襲えるようになると22分、左サイドからのFKに上里が、ニアに意表を突く低く速いキック。このボールがDFの足に当たって抜けると、おもわず闘莉王が足を出してボールはゴールに吸い込まれる。自責点としてしまいます。

運よく転がり込んだ先制点でしたが、凌いで自分たちの時間帯にしたからこそでもありました。その後も熊本のペース。京都は我慢の時間帯が続きます。

熊本はこのまま前半リードで終わらせたい。しかし京都も反転攻勢。右サイドPA前で仕掛けた田村を倒して植田がFKを与えると、石櫃のキックから小松屋が拾い直してクロス。しかし、グスタボのクリアが小さいとみた石櫃、グスタボが寄せてくる前に足を振った。抑えてドライブのかかったシュートが、PA内のDFの間を縫ってゴール左に転がり込んでしまいました。

振り出しに戻った後半。ハーフタイムでの指揮官の指示は、「セカンドボールをもっと意識しよう」「マイボールになったら、慌てず動かしていこう」。そして「相手にしっかり身体を当てていこう。耐えるところは我慢強く!」(公式)というものでした。

後半開始早々、京都の前線からのハイプレスで危うくPA内に入られそうになりますが、三鬼が奪って素早く前線に長いパス。これをグスタボが胸で前進方向に落とすと、黒木が拾って右から低いアーリークロス。左から上がってきていた嶋田に届くと、流し込むようにシュート。しかしこれはGKがブロック。それを再び拾った上村が嶋田とワンツーして放ったシュートは惜しくも枠の右。何度もない、決定的なチャンスでした。

その後いっときは攻守切り替えの早い攻防戦となりましたが、熊本にリズムがあるとみるや京都の布部監督が先に動く。ヨンジェに代えて大黒。田村には伊藤と2枚代え。

「大黒か。やっかいな選手を入れてきた」というわれわれの思いは、ピッチ上の選手たちも同じだったのでしょうか。京都がリズムを得て巻き返し始める。

すると71分、京都に与えた右CK。縦に並んだ京都の選手たち。動き出しに中央スペースを空けさせられると、陰から飛び出すように闘莉王がジャンプ一番、高い打点でゴールネットに突き刺します。

その直前にはかなり疲れている様子を画面越しに見せていた闘莉王でしたが、ここぞという場面ではやはり仕事をする。怖い男でした。この得点は自身100得点目の記念ゴール。試合後のインタビューでそれを祝福されると、「オウンゴールのことですかね(笑)?」とうそぶきました。

熊本も上村に代えて中山、片山に代えて田中。グスタボを諦め、コンディションが不安だった安を投入。最後は植田を上げてパワープレイ。

しかし、アディッショナルタイムの三鬼からのクロスに跳んだ植田のヘディングも、途中から入ったケヴィン・オリスに身体を張られて枠の左。万事休しました。

先制したものの逆転負けでした。せめて同点引き分けで勝ち点1は持ち帰りたい試合だったのですが。指揮官はDAZNのインタビューに、「後半の決定機で取れなかったのが大きい」と悔やみました。

「警戒していた“個”の力でやられた」とも言う。確かに闘莉王の高さはこのリーグでは“破格”に違いありません。しかし前述したようにあのセットプレーは、その“個”の力を活かすようにチームとしてデザインされてもいたように感じます。そして最後にケヴィン・オリスが、しっかり跳んだことも、チームとして徹底していると…。まあ、それを可能にするのもまた個なんですが。

ただ、熊本も4試合ぶりにアンカーに入った上里の展開力、三鬼の気の利いた縦パス。上村も嶋田もPAに顔を出せるようになって、京都を一時は追いつめた。どうしようもないような攻撃の手詰まり感は解消された試合でした。

まだまだ強豪チームとの厳しい対戦が続きますが、勝機は十分にあるように感じましたね。

10月7日(土)
【J2第36節】(松本)
松本 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[松]高崎寛之(55分)
<警告>
[松]パウリーニョ(58分)
観衆:11,026人
主審:大坪博和


「松本のやり方は分かっている中で、セットプレーから失点したことが悔しい」(熊日)。敗戦後、池谷監督はそう記者団に答えました。スピードのある石原を走らせ、高さのある高崎で仕留める。”松本のやり方”は分かっていた。しかし、まんまと術中にはまりました。

熊本は、前節故障退場した園田の代わりに植田を起用。北朝鮮代表に召集されて一時離脱している安の代わりにはグスタボ。しかし、ワントップではなく嶋田との2トップ。中盤は上村をアンカーに置いて、三鬼と中山を2列目に。われわれもグスタボはワントップより2トップが生きると考えていただけに、理にかなった布陣。

松本は5位。PO圏内にいるものの、まだ自動昇格圏内も視野に入れる。

20171007松本

序盤は互角。松本の石原、高崎を狙った長いボールを撥ね返し、セカンド争いも球際強く行って戦う熊本。

しかし、松本も徐々に熊本に慣れてくるとアタッキングゾーンを占領し始める。GK畑を中心にした守備陣でしっかり守る。ただ、奪ってからの松本の帰陣も早く、持たされている感もありました。

そんななか、前半のアディッショナルタイム。右サイドからのスローイン。エンドラインぎりぎりのグスタボが右足で反らすと、嶋田が飛び込んでダイレクトシュート。終了間際に意表を突かれた松本でしたが、これはバーの左に外れてしまいます。惜しかった。

ハーフタイムを終えて後半のベンチに戻る池谷監督を捕まえてのDAZNのインタビュー。「怖がらずにボールを動かせ」と指示したという指揮官の答えに、われわれもそうだろうと思います。少し攻撃に躊躇している。ただ、このまま守備をオーガナイズして0-0の時間が長くなれば、焦れた松本が前に出てくる。そうすれば熊本にはカウンターのチャンスが増える。そういう心理戦でもあったのですが。

熊本の攻勢から奪った松本のロングパスに石原が走ると、小谷がスライディングで外に出す。いい対応でしたが、これに続いたCK。熊本の守備はマンツーマン。パウリーニョのキックは、高崎の一番高い打点にピタリと合って叩き付ける。先制点を与えてしまいました。

これで前に行かなければならいのは熊本の方になってしまいました。が、引いてブロックを敷いた松本に、アタッキングゾーンまでは入れるものの、片山や三鬼からのクロスは、十分に相手が対応できるタイミングと角度。相手の嫌なゾーンに入っていける選手もいない。

カウンターを狙ったグスタボへのロングボールには、松本のDFが必ず前に入って収めさせない。疲れからか徐々に攻撃のスピード感も薄れる熊本。

そこでグスタボに代えて巻。中山に代えて八久保を入れる。かなり長い時間、松本を自陣内に押し込んで波状攻撃を仕掛けますが、松本にしっかりと守られて”ヒヤリ”ともさせられない。

最後は上原を下げて4バック。ジュニオールを前線に入れてパワープレイを試みましたが、実らず。松本に1点を守りきられ敗戦となりました。

勝者の指揮官・反町監督は、それでも「時間の使い方が、最後良くなかった」(DAZN)と手厳しい。やはり2-0で折り返しながら、最後の5分で逆転された前々節、山口戦を相当悔やんでいる。逆に熊本にとっては、その松本の試合のクロージングに付け入る隙ありという思いもあったのですが。

「パワーのある松本相手でも、ゲーム自体はどっちに転んでもいいというような試合が出来るようになった」(DAZN)と池谷監督は言う。「(課題は)どうやって点を取るかということに尽きる」(熊日)とも。確かにそう。

しかし、DAZNのこの日の解説者・飯尾和也氏が言う。「堅い守備は見れていた。しかし、あの一瞬、あのワンプレー。あれを外さなければ、0-0、もしくは1-0、結果は変わっていたかも知れない。あれを放さない、しっかり最後まで頭を入れる。そういう”厳しさ”があれば、また上がっていける」。

闘争心を表に出したプレーで、”鳥栖の魂”とまで言われたディフェンダーの言葉が、とても重く感じられ…。一瞬も放さない”厳しさ”。この1点の差が、あらためて大きなものに感じられたのでした。

10月1日(日)
【J2第35節】(えがおS)
熊本 2-1(前半2-0)愛媛
<得点者>
[熊]嶋田慎太郎(17分)、小谷祐喜(22分)
[愛]三原向平(68分)
<警告>
[熊]嶋田慎太郎(86分)
観衆:4,005人
主審:西山貴生


連勝は、今季ようやく2度目だというのですから、どれほど厳しくつらいシーズンかがわかるというものです。愛媛との前回対戦は4月。今シーズン初めての4連敗を喫した試合でもありました。

今節は、村上の負傷以来、3バックの真ん中を担っていた植田が累積警告で出場停止。池谷監督は、直前まで木村、上原を代わる代わる試して悩んでいたようですが、結局先発には上原を起用しました。

上原にとっても初めてのポジションだったようですが、なかなかどうして、器用に、そしてしっかりとこなしました。これは単なる“代役”に止まらない、新しい組み合わせの発見かもしれません。まぁ、久しぶりの90分だったこともあって、最後に足を攣ってしまったのはご愛嬌というところでしょうか。

20171001愛媛

試合前のDAZNのインタビューで、対戦相手のことを問われて「オーガナイズが似ているチーム」と池谷監督が答え、愛媛・間瀬監督も「攻守のコンセプトが似ている」と述べていて興味深い。

熊本は開始早々から飛ばします。スローインを回り込んで奪った中山が、右サイドをえぐってクロス。安のヘディングは直前にDFがブロック。8分にも安が落として嶋田が持ち上がり、中山がエリア侵入。左足を振りましたがGKにクリアされる。中山の執拗なプレスは身上ですが、それに嶋田、三鬼、上村も加わって愛媛を前に向かせない。高い位置で奪うと次々にショートカウンターを浴びせ、スタジアムを沸かせます。

相手ボールホルダーへの素早い出足。それは“後ろを信じてプレスに行く”という感じ。交わされてもいい、後ろを信じていると…。

すると17分。三鬼の得意のノールックパスが縦に入ると、中山がすかさずDFライン間に走り込んだ嶋田にスルーパス。少し浮きぎみでしたが、これを嶋田が絶妙にトラップしてDFの裏を取ると、両手を広げたGKパク・ソンスをあざ笑うかのようにニアサイドを抜いて流し込みました。先制点!

その後も“受け”に回らなかった熊本。22分には安のボレーシュートで得たCKのチャンスに、三鬼がインスイングのボールを送ると、ニアサイドのDFの間から小谷が頭を出して突き刺す。追加点を奪います。

ほとんど危ない場面を作らせない完璧な守備、そこからくる攻撃での2点先取で前半を終えます。

しかし、後半は逆に愛媛の一方的な攻勢。プレス、球際とも愛媛が上回ってきた。愛媛が前半の熊本と同じことをしてきたと言っていいでしょう。前を向かせない。

さらに59分にアクセントとしての安田、66分には前線に有田を加えると、熊本も我慢の限界でした。河原が1度シュートモーションを掛けて左にはたくと、白井がダイレクトでクロスを入れる。大外のブラインドから三原がダイビングヘッドで入り込んだ。1点差に迫ります。「オーガナイズのところで混乱した」(DAZN)と指揮官も悔やむ。

選手交代で流れを変えたい熊本でしたが、上原が足を攣って光永と交代の用意。しかし小谷も痛んで一旦ストップ。結果的には園田に代えて光永。このあたりは、難しいベンチワークを迫られました。

終盤のきつい時間帯。踏ん張れた方に勝利の女神がほほ笑む。巻が入るとひときわ大きな拍手。最後は頼れる男の登場。

アディッショナルタイムの4分も愛媛が拾い続けて波状攻撃。最後の最後に来たチャンス。途中出場の田中のカウンター。右サイドをドリブルで運んで一人交わしてのシュートは枠の左。そして終了の笛が吹かれると、多くの選手たちが崩れるように膝を着きました。

互いのことを「似ている」と分析していた両監督。敗戦の将・間瀬監督は、「ゲームの入りに熊本の選手たちが本当に素晴らしい攻撃と守備、守備ではプレス、球際、セカンドボール、攻撃ではつなぎ、飛び出しというものを本当に思い切ってやった」「あの時間帯に上回られたことがこのゲームのほとんどすべてを決めた」(熊本蹴球通信)と言う。

しかし一方で、まるで野球の表と裏のように後半は愛媛がそれを上回る。“似ている”だけに、“上回った”わずかな差が、勝敗を分けた。そんな試合ではなかったでしょうか。

熊本は逃げ切って勝ち点を36に積み上げ、足踏みした降格圏・山口との差を8に広げました。順位も金沢、讃岐を抜いて18位に浮上。「ふーぅ」と息を吐きたいところですが・・・。

しかし、池谷監督が「この状況は最後まで続く」と言っていたように、一喜一憂せず、目の前の1戦1戦を戦い続けなければいけない。それが今シーズンでしょう。

9月24日(日)
【J2第34節】(NDスタ)
山形 0-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[熊]安柄俊(89分)
<警告>
[山]荒堀謙次(68分)
[熊]嶋田慎太郎(56分)、植田龍仁朗(84分)
観衆:5,877人
主審:塚田智宏


試合直前の先週22日に配信された熊日の「がんばれロアッソ熊本!」の記事を読んで、暗たんとした気持ちになりました。「山形戦前の囲み取材で、池谷友良監督が苦々しい表情を浮かべた」「22日に取り組んだ紅白戦の内容。ゴール前で待ち構えるFW陣へサイドからのクロスがピンポイントで合わず、クロスが入ってもいい形でのシュートにはならなかった」とあったからです。

前節のエントリーでわれわれも「最後のクロスの精度が甘い」と嘆きました。くだんの野島記者は「試合日までに少しでも物にしたいところだ」とも書いていますが、不安がつのったのはわれわれだけではなかったと思います。

しかし、蓋を開けてみれば…。左WBの片山からのアーリークロスが安にピタリと上がったのも2度、3度。そして決勝点を決めたのも、代わって入った田中からのピンポイントのクロスでした。

山形との前回対戦は3月。あの劇的なGK佐藤のヘディングで同点に追いついた。もう遠い昔のような気がします。山形は現在12位。5試合連続引分けで、6試合勝利から遠ざかっている。なんだかそういう相手がこのところ多い(笑)。

20170924山形

ゲーム序盤は山形に押し込まれました。いきなりのSB高木のシュート。FW阪野のヘッドなどでゴールを脅かされる。その後もボールを持たれ続け、自陣にくぎ付けにされました。

しかし15分あたりから熊本も徐々に反撃に。相手ボランチへの厳しいプレスで前を向かせないと、山形はDFラインからアバウトな長いパスしか出せない。サイドは主に片山を使っていくが、古巣対決で気合の入った園田が、積極的に上がってサポートしている面も大きい。

29分、小谷から右奥への長いボール。安が前を向いて一人交わすと中の嶋田へ。嶋田は一人交わそうとしましたが、後ろから入られて決定機は潰される。

しかし、“いい守備”からの攻撃。熊本のカラーが出ていた場面でした。

中盤で奪ってボールが運べるようになった熊本。ハーフタイムでの山形・木山監督の“修正”が不気味でしたが、初っ端のCK、中央で反らしてファー鈴木のシュートは枠の上。

これを凌ぐと、戦況は一進一退。ホームで勝ちたい山形は攻勢を強めますが、熊本も球際の激しさを緩めない。1点勝負の堅い展開に、われわれも心臓の鼓動が速まります。

好守にわたって相当の運動量を誇った中山が“落ちて”きたとみるや、菅沼を投入する熊本。山形も松岡に代えてドルブルに定評のある汰木を入れてくる。

残り15分を切るころにはオープンな展開に。81分、山形のスローイン。バイタルを襲うと熊本のクリアが小さく、Pエリア内で瀬沼が強烈なボレーシュート。間一髪、GK畑が好セーブ。

最終盤、両者ともに苦しい時間帯。このまま敵地で勝ち点1でも仕方ないかいう思いも頭をよぎりました。しかし、DAZN解説の越智氏が言うように「山形の方が重たい」感じもした。アディッショナルタイムに入ろうかとする89分でした。

片山に代わって左に入っていた田中がクロスをいれるがクリアされる。拾ってまた田中に回すと、切り替えして再びクロス。ニアへの低く速いボールに飛び込んだ安。難しい角度で反らしたヘディングシュートが、山形のゴール右に吸い込まれました。クロスの質も良かったし、安の技術も優った。

瞬間、喜びで爆発したような熊本ベンチ。駆け寄る安をしっかり“熱く”抱きしめるのは北嶋コーチ。

「ここ数試合、守備陣が踏ん張っていたんで、得点が取れてうれしい。今日のゴールは、コーチの北嶋さんにクロスの入り方をコーチされていたんで、キタジさんに感謝したい」と、DAZNのインタビューで安も答えた。

好アシストの田中も、「全体練習後に、2人でクロスボールの自主練習を毎日続けてきた。多いときは30、40本クロスを蹴ってきた」(熊日)と明かす。

冒頭のわれわれの心配を吹き飛ばすように、地道な練習に裏打ちされたコンビプレーが実を結んだのでした。

迎えたアディッショナルタイム。山形はパワープレー。アーリークロスに途中出場のDF荒堀が頭で合わせますが、これもGK畑がクリア。今日も守護神の再三に渡るビッグセーブが、クリーンシートに導きました。

まさに“虎の子の1点”を守り切りましたね。少し前の時間に終了した試合で、山口が松本を下していただけに、尻に火かついた気分でしたが、勝ち点差5のままにできました。目標とする勝ち点40までは、あと7。

NDスタにこだまする勝利の凱歌「カモンロッソ」。実に8試合ぶりでした。

「これで選手たちのストレスが吹っ切れて、やってくれるんじゃないかと期待している」と、指揮官はDAZNのインタビューで言う。負けられないゲームは続きますが、この勝利を勢いに代えて、次節はホームでも「カモンロッソ」を見たいものです。

9月18日(月)
【J2第33節】(えがおS)
熊本 1-1(前半0-0)福岡
<得点者>
[熊]嶋田慎太郎(73分)
[福]ウォン・ドゥジェ(69分)
<警告>
[熊]園田拓也(86分)
[福]岩下敬輔(64分)、亀川諒史(88分)
観衆:5,202人
主審:三上正一郎


その瞬間、思わず椅子から腰が浮きました。時計は後半アディッショナルタイム。もうほとんど時間がない。最後に両チーム、オープンになった展開のなかで、中盤のチェイスから嶋田が拾って左へ運んで奥から柔らかいクロスを上げた。ゴール前にはグスタボ。ヘディングは、しかし、バーに当たると直下に落ちる。ゴールは認められず、勝ち越しを逃しました。

20170918福岡

台風18号の影響で、1日延期になったこの試合。熊本は安と嶋田の2トップで臨みました。「前に2枚置いて、オーガナイズを変えたなかで先制できれば」(熊本蹴球通信)というのが池谷監督の狙い。入場時は、前節で右膝前十字靭帯を損傷し6カ月の加療が必要となって戦列を外れる村上を思い、全員が背番号6のユニフォームを上から羽織って気持ちを統一。勝利を目指します。

しかし蓋を開けてみれば、思いのほか守備がはまらない。

福岡はウェリントンが、前節の愛媛戦での悪質行為で2試合の出場停止。これが発表されたのが15日。「(ウェリントン)対策でスタートしたので少し拍子抜けした部分はありますけど、逆に嫌なタイプが来た」(熊本蹴球通信・池谷監督)という面もあるかも知れません。前線には仲川、坂田。2列目に石津と山瀬。5試合勝利から遠ざかっている福岡。すでに長崎が大分を下して暫定2位に浮上していた。ここで熊本にしっかりと勝利して自動昇格圏の2位を取り戻しておきたいという気持ちは強かったでしょう。サポーターも多くが駆けつけ、ゴール裏を青く染めました。

前半は全くボールを保持できない時間帯が続きます。福岡の大きなサイドチェンジが続き、スライドで走らせられる。

前半唯一のシュートは、左45度からの安のFK。低い弾道で壁の右を通過するもGK杉山のパンチングに阻まれました。

前半を終えてすぐのDAZNのインタビューで「ランニングが必要になってくる。脇を取られているので若干の修正が必要」と語った池谷監督。後半から2トップを止めて、これまでの5-4-1に戻します。その効果もあって、熊本もセカンドボールが拾えるようになり、ボールを縦に入れ、カウンターの形も増えてきた。

58分のカウンター。中山から右の嶋田へ。嶋田が中央PA内の安にパスすると、更に詰める。安のトラップを入れ替わって奪うように近距離からシュート。これはGKにクリアされます。惜しい。

しかし逆に69分。福岡は途中交代のジウシーニョが、スローインを右サイド奥で粘ってマイナス角度でニアに入れると、上がってきたウォン・ドゥジェが右45度から打つ。植田が足を出して当てたものの、これが逆に災いして、ボールは高く上がってGK畑、DF小谷の頭を越え、ゴール左隅に吸い込まれてしまう。後半も半ばを過ぎた嫌な時間に痛い失点。

ただ熊本もすぐに取り返す。サイドチェンジぎみに左の片山にパスが通ると、中の状況を見極めた片山が持ち直してドリブル。これをジウシーニョが倒して得たPKでした。

嶋田がボールを持って離さない。ちょっと助走が短かすぎないかと心配したのですが、GKの逆を突き、鋭いゴールを決めます。同点。

一気に勢いづいた熊本に反して、福岡は三門に代えて前線に松田を入れて”勝ち越したい”。ここから、5試合勝てていない福岡のメンタルがマイナスに働いた面もあるかも知れません。

熊本は片山に代わって入ったアビスパの下部組織育ちの光永が、挨拶代わりのように左サイドを抉り、DFを交わして躍動。しかし、片山もそうでしたが、どうも最後のクロスの精度が甘い。

そして最後はオープンな展開のなか、冒頭書いたような決定機を外すと、熊本vs福岡戦、バトルオブ九州の一戦は、ドローに終わりました。

後半、かなり攻勢を得た時間帯もあったのですが、90分間を通してみたら、両者の今を象徴するような内容、結果ではなかったかと。

ただ指揮官は、「押し込むことは後半できていたので。最後まで走るとか戦うとか、そういうところはできるようになって、上のチームとやっても粘り強く戦えるようになったことは、自信として持っていきたい」(熊本蹴球通信)と言う。引き分けが続くなかでも、「どっちに転ぶかというゲームも多いので、そういうゲームがやれていることをプラスにとらえたい」と。

この積み上げた勝ち点1で、足踏みした19位讃岐との差は1に縮まり、下の山口とは5の差に広げました。前節のエントリーで書いたように、まさにこの状況では勝ち点1を積み重ねるサッカーがベースになるということ、そのものでした。

われわれにしては、PKとはいえ、久しぶりに自チームの得点が見られ、そのときにタオルマフラーを思い切り振れたのは、何よりの”吹っ切れ”感がありました。得点は何よりの”良薬”かも知れない。

しかし、指揮官は記者に問われて改めて応えます。「選手とも確認しているのは、残り9試合も最後まで(この状況は)続く」のだと。

それはすでにわれわれも覚悟を決めたこと。この試合の勝ち点1を見届けて、スタンドに挨拶に来た選手たちに、大いに拍手を送ったものでした。“次は勝てるぞ”、“絶対に負けないぞ”、という応援の気持ちを含めて。